今回はマーローのディナーナイフを使った指輪のトリックを紹介します。
マーローは、このトリックをペン、マドラー、テーブルナイフなどでも
演じていますが私は刃の無いペーパーナイフで演じています。
現象
指輪が嵌っているナイフの両端を客が握っているにもかかわらず、パフォーマーはその指輪をナイフから取り去ってしまいます。
準備
ディナーナイフ
指輪(印章つきタイプが良い)
マーローは“リング・オン・スティック”で使用する指輪をほとんど客から借りていますがロープと違ってスティックやナイフは固形の硬い物で、しかもナイフは金属であり、大切な指輪に傷が付く恐れがあります。
したがって私の解説では、マーローのこの種のトリックで使う指輪は全てパフォーマー側が前もって準備していた物を使っています。
ルーティーン
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ナイフの柄の部分を下に向けてその中間を左手で持ちます。右手は指輪をナイフの刃の先端に嵌めます<写真1>。
写真1
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右手を放すと指輪はナイフを滑り落ちて左手の所で止まります。それから左手の指を緩めて、指輪をナイフの柄の下に移動した右手で受け取ります。
言い換えると、右手を放すと指輪はナイフをスライドして、左手の親指と中指を通過して、少し曲げた薬指の所でちょっとの間止まります<写真2>。
写真2
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その間に右手は、手の平を上に向けてナイフの柄の下の約3cmの所へ位置させます。
そして左手の指を緩めて、右手の平へ落として右手はすぐに握ります<写真3>。
写真3
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「硬い物は二つです。丈夫なナイフと硬い指輪です。」と言って、再度指輪をナイフに嵌めて右手へ落とす動作を繰り返します。
続けて右手は指輪をナイフに嵌めて、「指輪をこのナイフに通すのは簡単でしょう?」と言って、この3度目のスライドダウンの時に、指輪を左手の薬指の所で実際に止めます。
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すぐに右手は、左手の前方の少し下へ位置するやいなや、右手をちょっと下へ動かして指輪を受け取ったふりをします。
指輪がナイフを滑り落ちる時の金属が金属にぶつかって出る音は客に錯覚を与えます。
つまり客はすでにパフォーマーの理に適った動作に慣らされて偽の動作の嘘に引っ掛かっています。
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左手はターンしてナイフを床と平行にします。それと同時に左手の指はナイフをしっかり握り締めて指輪を隠します。右手の拳はまだ指輪を持っているふりをしています。
そして「ナイフの両端を両手で持って下さい」と言って、左手を客の方へ伸ばします。
客がナイフの両端を持ったら、パフォーマーはナイフの上で左手の指を伸ばします。
それと同時に右手を左手の下へさっと動かして、指を伸ばしてすぐに両手の平を合わせます。
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ナイフと指輪は両手の平の間に挟まれています。この時はタイミングが非常に重要です。
客はパフォーマーの右手が空だとは知りません。
そしてパフォーマーは両手の平を前後に擦り合わせます<写真4>。
写真4
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それから急に、さっと両手をパフォーマーの体の方へ引き、ナイフに嵌っている指輪を示します。
右手の平を下に向けて、ナイフの中央にある指輪を上から握って、客からナイフを受け取ります。
次に右手の親指を指輪の右側に位置させます<写真5>。
写真5
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左手は水平になっているナイフの左側を握ります。すると右手と左手の間に短い間隔ができます。
右手は表面上その指輪をナイフから取り去るように、直ちに右側へスライドします。
しかし右手を右側へスライドし始める瞬間に、右手親指は指輪を左側へ弾き飛ばします。
すると指輪は瞬間に、そして見えずにナイフに沿って左手の中へ滑り込みます<写真6>。
写真6
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指輪が左側へスライドする時に出る金属と金属がぶつかり合う音は、反対側へ動かす右手の中に指輪を握っているという錯覚を起こします。
右手は指輪をナイフから引き抜いたふりをして拳をターンして甲を下に向けます<写真7>。
写真7
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そして手の中に指輪を握っているかのように、弛くカップ状にした拳を軽く上下に振りながら「この指輪は非常に価値があります。もしかするとマジックパワーを持っているかもしれません」といいます。
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その間に左手の平を下向きにターンして、ナイフを水平に持ちます。
そして再び客にナイフの両端を持ってもらいます。
前のように両手の平を擦り合わせてナイフに貫通した指輪を示します。
ここでトリックを終わっても良いですが、次のように繰り返す事もできます。
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パフォーマーは左手で客から指輪に貫通したナイフを受け取り、その両端を両手の平に付けてナイフを水平に保持します。
そして両手はナイフの両端の先端をシーソー運動のように上下に傾けて指輪を左右にスライドさせます。
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この上下運動を数回行って「あなたが両端をもっているのでナイフに貫通した指輪を取るのは不可能ですね」と言います。
指輪が左手の平のベース付いたときに上下運動を止めます。
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次に左手は指輪をナイフの中央へ戻すふりをしますが、実際はここで指輪を中央にスライドバックするちょうどその時に左手は指輪を回転してナイフの表面をスライドするバーノンの方法
(
第6回:ザ・リング・オン・ザ・ウォンド <方法2>
)を行います<写真8、9>。
写真8
写真9
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ここでも金属が金属にぶつかる音が聞こえて客に錯覚を与えます。
左手はナイフの中央へ動かして指輪と共に握り、そして客の方へ伸ばしてナイフの両端を持ってもらいます。
次に右手は指をパチンとスナップして手の平を上に向けて左手の下、約10cmの所へ位置させます。
そして左手は指輪を放して右手の平へ落としてトリックを終わります。
『Arcade Dreams』:
"Ring Ware" P.122~124.