ダイ バーノン
これは、エドワードマーローの“リング・オン・スティック”には使われていませんが、この種のトリックには非常に役立つテクニックですので是非やってみて下さい。
同型同色のリング2個とウォンドを用意します。
先ずリング1個を<写真1>のように左手の小指の位置にフィンガーパームします。もう1個のリングとウォンドをテーブルに置いておきます。両手の平は下向きでテーブルエッジに付けておきます。
次の動作は、パフォーマーがトリックを始める前に、ただ単に右手でウォンドを取り上げて左手に持ち替えただけという動作を示しています。
『Louis Tannen:Stars Of Magic』:
"The Ring On The Wand" by Dai Vernon P.87
第5回、6回、7回と紹介してきたザ・リング・オン・ザ・ウォンドの方法1、2、3は如何でしたか?
演技を成功させる為の適切なミスディレクションとタイミングが相手の心理を上手く突いているトリックだとは思いませんか?
手順の理想的なタイミングとミスディレクションは、お互いに調和や同時性やバランスを上手くブレンドしていて、マジックのムードを作り出すための基本的原理を教えてくれていると思います。
こう考えてみるとマジックは本当に素敵なエンターティメントの世界ですね。
さて、ここで、もし、この種のトリックをもっと専門的に研究しようとすると、 かなり多くのリング(指輪)を用意しておく必要があります。
客から借りたリングを使う場合は事前に、 それに似たリングが必要になりますので、 少なくともゴールドとシルバーのリングぐらいは前もって準備しておいた方が良いと思います。
私は客から宝石や模様の無い普通のリングを借りて行っています。
この種のトリックを行う時にもう一つ、ウォンドにはめたリングを音も無くウォンドの中央へスライドさせるという重要課題が残っています。
完全に音を消すのは不可能ですが、バーノンはその方法としてウォンドを持った手の指をリラックスさせて、固く握り締めない事、つまり、手の平ではなく指1・2本の僅かな力でスライドさせると言っています。
私は次のように行っています。ウォンドにはめたリングに中指を巻きつけて、親指の先をリングとウォンドに付けて握ります。
言い換えると、ウォンドを小指のベースと、小指・薬指のそれぞれのボール部に、そして人差し指の第一・第二関節の間にピタッと付けて、さらに親指のボール部をリングとウォンドの表面に付けて握ります。
中指はリングのみに触れていて、ウォンドにはほとんど触れていません。即ち、小指のベースと小指・薬指の指先と、そして人差し指の第一・第二関節の中間と、親指のボール部にある程度の力を加えてゆっくりスライドさせます。 すると不思議な事に、リングはほとんどウォンドに触れずにスライドします。
私の方法は言葉で表現しにくいですが、手の皮膚がウォンドに密着してその表面をスライドするので、音がほとんどしません。