平川一彦

オン・ザ・テーブル
第6回
ザ・リング・オン・ザ・ウォンド <方法2>


 これもエドワード・マーローの“リング・オン・スティック”の中に使われているバーノンの方法で、応用の広いテクニックです。

準備

 同型同色のリング(指輪)2個とウォンドを用意します。
リング1個をズボンの左ポケットへ入れておき、もう1個のリングを右手の平に置きます。
ウォンドは左手に持っています。

ルーティーン

  1. 左手のウォンドで右手の平のリングを示します。
    右手はリングをウォンドの右端にはめて、 中央まで滑らせウォンドの両端を両手で握ります。

    「もし、リングをウォンドにはめてこのように両端を持つと、普通はリングを外す事は不可能です」と言います。
  2. 次に、右手はウォンドを放して、手の平を上に向けます。
    左手はウォンドの右端を下へ傾けて、リングを右手の平へ滑り落とします。

    左手は、ウォンドの中央より少し左側を持って、右手はリングを親指と人差し指と中指で持ち<写真1>のようにウォンドの右先端に実際にはめます。
  3. 写真1
    写真1
  4. 次に、右手をリングと共に左側へ回転させると、リングは<写真2>のようにウォンドから外れてウォンドの上部に位置します。

    写真2
    写真2
    <写真2>はリングの位置を分かりやすくするために、 右手の人差し指を伸ばしていますが、 実際は人差し指はリングに付いています。

    そして右手は、リングをウォンドの表面に沿って、その中央まで擦る音を立てながらスライドします。

    今までに述べた動作は、全て一連の動きで行うとリングは実際にウォンドに、はまっているように見えます。

  5. 右手はウォンドの中央でリングを右手人差し指と薬指の間に挟んで少しウォンドの前方(客側)へ動かし、そしてウォンドの下へ回します。
    次に、右手はウォンドを握り締めながら、右手の中指でリングを<写真3>のように親指の方に回し、そのままサムパームの位置に入れます。

    写真3
    写真3
    左手を放して、右手だけでウォンドを保持します。
  6. そして次は、左手の人差し指でウォンドの左端を指差して
    「あなたの右手でこの端をしっかりと持って下さい」

    と言ってから、ためらわずに右手はウォンドの右端を少しだけ右斜め前方(客側)へ出しながら、同時に左手をウォンドの下方沿いにその右端へ動かして、左手の人差し指でウォンドの右端を指差します。

    「そして左手で、こちらの端もしっかりと握って下さい」と言います。しかし、左手が右手の下を通過する時にリングを左手の曲げた3本指の中へ落とします。

    この動作の時は必ず客の顔を直視して行います。
    決してウォンドや手を見てはいけません。更に左手で何かを受け取るようないかなる動き(例えば、そこで左手を止めるとか)もしてはいけません。
  7. 客がウォンドの両端を持ったら、パフォーマーは右手をゆっくりとウォンドから放します。リングは消えています。

    「リングはいつの間にか私のポケットに入りました」と言って、すぐに左手をズボンの左ポケットへ入れて、前もって入れておいたもう1個のリングをフィンガーパームして、 たった今左手に落としたリングを、左手の親指と人差し指で持って、ポケットから出します。
  8. 「もう一度やってみましょう」と言って、右手は左手のリングを取り、左手は客の持っているウォンドを上から握りますが、この時にパームしているリングが客に気付かれないように注意します。
    右手は前と同じようにリングをウォンドの右端へはめて、ウォンドの中央へスライドする動作を繰り返します。

    しかしながら、今度は実際にリングをウォンドにはめて、 右手でそのリングを中央へスライドしますが、 この時に少し怪しい動作をして、客にリングはウォンドに、はまっていないと思わせます。
  9. そして同じように、右手はウォンドの中央を持ち、その両端を客に持ってもらう為に左手の人差し指でウォンドの左端を指差し、次に右端を指差しますが、左手が右手の下を通過する時に、左手の中へリングを落としたということを客に認識させる為に、リングを左手がキャッチしたいという動きを強調します。客は、ウォンドの両端を持ち、パフォーマーはその中央を握っています。
  10. パフォーマーはここで、左手をズボンの左ポケットへ入れますが、そのときに左手にパームしているもう1個のリングを客にちらっと見せます。同時に客に向かって「あなたがウォンドの両端を持っているのに私がリングを外す事が出来ると思いますか?」と言います。

    客の誰かが「私はあなたがリングをポケットに入れたのを見てしまいました」と言うでしょう。パフォーマーは「本当?」と言うと客は確かに間違いないと言い張るでしょう。

    または、客は何も言わないで疑い顔をしているだけかもしれません。そんなときは客の顔をじーっと見つめて「何か見えました?」と言って、客の返事を待ちます。

  11. 客が何か言ったら、パフォーマーはばつが悪いような顔をして「それではあなたが両端を持っているウォンドに私がリングを戻したら素晴らしいトリックになりますね」と言います。 そしてポケットの中の左手はリングを放して、あたかもリングを持っているかのような形で左手をポケットから出します。
  12. そして左手をウォンドの下へもって行き、両手の平を合わせて擦り、リングとウォンドの摩擦音を立てます。それから、ゆっくりと両手を放して、ウォンドにはまっているリングを示します。

『Louis Tannen:Stars Of Magic』:
"The Ring On The Wand" by Dai Vernon P.85~86.

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