<解説>
この奇術は、浜松アマチュアマジシャンズクラブの山田会長が古典的奇術を競馬の出走馬の話に当てはめたものであり、
そのストーリーは競馬の着順を予想するという話がピッタリした演出になっています。
そこで、次のように演じ方をまとめてみました。この奇術の原理は数理的ですが、同時に心理的策略が使われています。
種明かしを聞くと馬鹿馬鹿しいくらい当たり前な種なのですが、そういう当たり前なものほど優れた原理であって騙されやすいのです。
<効果>
15枚の出場馬の名前が書かれたカードをまず紹介します。次にそれをいろいろと混ぜ合わせてみます。
すると、最後にその順序(競馬の着順と想定)をあらかじめ予想していたことがわかりびっくりするでしょう。
<用具>
- 15枚のカードを用います。カードの表は騎手の乗馬姿です。<写真1>
<写真1>
そして、裏には次のようにもっともらしい競争馬の名称が書かれています。
バーノンタッチ | | テンカイパーム |
フレットカップ | | スライディーニ |
ホフツィンサー | | タカギオオ |
フージーニボックス | | タマリッツ |
テンカッツ | | ターベルコース |
ヒューガードキング | | サーストンスリー |
カーディーニ | | ポロックバード |
バートンランス | | |
- 着順は優勝馬から5着までを予想することにします。
山田原案では疾走馬全部の着順を当ててしまう演出ですが、そこまでやると、かえってこの奇術の種を想像しやすくなります。
したがって、筆者は全部当ててしまうことを敢えて避けたいと考えており、以下の演出をお勧めします。
このため5枚のカードに優勝、二着、三着、四着、五着と書きます。<写真2>
その裏面には、例えば、それぞれ、これはという馬の名前を書いておきます。
この5枚のカードは馬の名前を例えば、赤、青、ダイダイ、緑、黒と別々で描いたりしておくと演出がはっきりします。
<写真2>
<準備>
裏向きの15枚のカードのトップから5枚を、優勝から5着までの順にしておくだけです。
残りの10枚はどういうの順でもいいので、着順の予想カード5枚はただ優勝、準優勝などと表示された面を上に向けて揃えておくだけでいいです。
<手順>
- 次のように楽しそうな話を始めます
「毎年、夏になるとコロシアムでフィズム競馬という有名なレースが行われます。
このレースの高額な賞金は、上位5位までに与えられ、毎年、どの馬が入賞するかが話題になります。」
- 優勝から五着までのカードを裏向き(馬の名前が見えない向き)にテーブルの上に左右に一列に並べて置きます。
そして、「これは評判のよい予想屋の予想です。」と言います。
- 次に、15枚の馬のカード取り出して示し、それを表向きにして広げて見せる。
そして、表から順に馬の名称を5~6頭分読み上げて紹介します。
- 広げたカードを閉じるとき、下から5枚目のカードの上に左小指のブレークを作る。
そして、それより上のカードが切り混ざるようにヒンズーシャフルを行います。
-
カードを裏向きに持ち直し、術者はそれを手に持ち、これから観客にやってもらうことを説明しながら、実際にそれを実行します。
それは次の手続きです。
①「ゲートが開いて、馬が一斉にストートしました。」と言います。
そして、15枚の上から一枚ずつ、4枚くらいのカードを
裏向きのままテーブルの上に重ねていきます。
②次に、「さあ、第一コーナーに差し掛かりました。」と言います、
今度は一枚ずつ3枚くらいのカードを表向きにその上に重ねていきます。
③次に、「いよいよスタンド前の直線です。」と言います、
再び裏向きで一枚ずつ3枚くらいをテーブルに重ねます。
④最後に、「さあ、最後のカーブです。」と言います、
手に残ったカード全部をそのままひっくり返して、
テーブルの上に重ねます。
- ここで、「1000メートルのコースを一周走りましたので、第二周はお客様にお願いしましょう。」と言い、
観客の一人にこれを真似て①②③④の手順を実行してもらいます。カードを配る枚数は適当でかまわないのです。
- 最後に、もう一人の観客にも同じことをやってもらいます。
このときは「このレースは3000メートルレースですから、あと一周です。」と言うのがよいでしょう。
- ここで、「カードはよく混ざり、さらに表向き、裏向きバラバラですが、
さあ、レースの結果を確かめて見ましょう。」といいながら、
カード15枚全体を裏返しし、その上から5枚のカードを一枚ずつ、おもむろに取り出して、
それを順に最初に用意しておいた優勝から5着までの予想カードの上に並べます。
このとき、この5枚は表だったり、裏だったりしますが、それはかまいません。<写真3>
<写真3>
- そして優勝のカードを表にすると、優勝馬の名前が一致しています。
- 次は準優勝です。そして、さらに第三着、第四着、第五着と一枚ずつそれが着順と一致することを確認します。
最後に、「賞金を手にしたのはここまでです。」と言い、山の次の二枚くらいを続けて表向きにしてその馬の名前を読み上げます。
そして、「これらの馬は、実力はあるのですがいつも予想に反して入賞を逃すのです。」と説明します。
「それにしても、どうして、予想屋はあらかじめ着順の予想ができたのでしょうか。
次のレースのときはこの予想屋の言うとおりに馬券を買うことをお勧めします。」と話を締めくくります。
<注> この奇術のトリックは、①②③④の動作を行っても、カード15枚の順序が逆になるだけで、
その配列は変化しないという原理に基づいています。
簡単な原理ですが、カードを表にしたり裏向きにしたりするので、観客はそのことに気づかないのです。
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Photo: study by CodyR