氣賀康夫

英語尻取り予言
(Capping Verses Prediction)


    <解説>

    これはなかなか面白い数理奇術です。興味深いことに位相解析という数学の一分野の定理を活用しているのですが、見たところそのような奇術には見えないと思います。 最初の考案は日本語の尻取りによるもので、これは天海賞受賞記念作品集に発表したことがありますが、英語版は構成がなかなか難しく、完成に30年を要しました。その理由は、イラストだけをみて単語が頭に浮かび、誰でもがそれを正しくスペルできることができるという単語を探すのに予想外の苦労をしたからです。今回のデザインの完成は2006年初頭でした。奇術としては、演出にやや時間を食うものですが、カードを尻取り風につなげて行くところでは、観客が謎解き感覚で遊んでくれますから、少人数のパーティなどでは、なかなか楽しい余興になります。アメリカ、イギリスならば小学生、日本なら中学生以上向きという感じです。ぜひ、お試しになってみてください。

    <効果>

    まず、術者は絵が描かれたカードを10枚示します。カードの裏にも絵が描かれています。観客はその絵の言葉を尻取りで連鎖していきます。するとうまく10枚が一列に並ぶことになりますが、術者はその最初の絵の頭のアルファベットと最後の絵の終わりのアルファベットとの二つの文字を予言することができるという奇術です。この奇術は繰り返すことができるが、演技としては三回で終わりにしたいと思います。

    <用具>

  1. 絵が描かれたカードが11枚あります。その表裏の組み合わせは次のとおりです。そのデザインを<写真1、2>にご紹介します。
  2.  roll - lobster,  lake - eel,  newspaper - rain,
     train - net,  thread - dart,

    写真1

     rose - ear,  racket - tiger,  eleven - nine,
     leopard - doll,  lion - nail,  tree - elephant,

    写真2
  3. 表にアルファベットの描かれたカードが7枚あります。それらは次の文字です。これはどういう文字体でもいいのですが、見本を<写真3>にお示しします。 S,N,R,T,D,L,E
  4. 写真3
  5. カードのサイズは名刺かブリッジサイズのカードくらいが適当です。
  6. 提供する絵のデザインは色鉛筆で彩色したものです。

    <原理>
    この奇術の原理は位相解析の一筆書き問題の応用になっています。 11枚の絵のカードで尻取りをやりながら並べると必ず最初のカードの言葉の最初の文字と最後のカードの最後の文字が同じになるようにデザインされています。 そこで、ある絵のカードを抜いて残りの10枚を尻取りで並べると必然的に最初の言葉の最初の文字と最後の言葉の最後の文字は、抜いたカードの言葉の最初と最後に一致することになります。

    <準備>
    上記の原理を活用し、次のように演出することとしましょう。例えばleopard-dollの一枚を抜き、それを一番下に置きます。 その上にSのカードを表向きに置き、その上に残る文字カード6枚を表向きに重ねます。ただし、L,Dを上から二枚目と三枚目にします。そして、その上に10枚の絵のカードを重ねておきます。<写真4>

    写真4

    <方法>

  1. 用意したカードをそのまま取り出し、上から10枚を数えながらテーブルの上にばらばらに並べます。次に文字のカードを数枚広げて見せます。そして上から文字のカードを三枚取りあげて、裏向きにテーブルの上に置き、三枚の内一枚(L,Dでないカード)を取って元に戻します。
  2. ここで、テーブルの上の二枚(L,D)がこれから観客のやることを予言するカードであると説明します。
  3. そして観客に10枚の絵のカードで、アルファベットの尻取りになるように全体を一列に並べるように依頼します。観客がすぐ分からない絵の場合はヒントを与えるのがいいと思います。並べ方はいろいろありえるのですが、観客が10枚を一列に並べられたときは、必ず最初と最後はLとDになります。予言の二枚を表向きにしてアルファベットの予言が当たっていたことを確認います。 <写真5>は一例としてで並べてみました。
  4. 写真5:
    Dart(thread)→tiger(racket)→rose(ear)→elephant(tree)→train(net)
    →nine(eleven)→ eel(lake)→lobster(roll)→rain(newspaper)→naiL(lion)
  5. 次に一回だけテクニックを使うことにします。そのためには、予言のLとDを開くとき、術者は残りの文字カードを手に持っている必要があります。その方法ですが、カードは左手で持ち、隠した絵のカードをボトムにして、それをその他の文字カードと分離し、左手の拇指でそれを支えて確保しておきます。<写真6>
    写真6
    そして右手で10枚の絵のカードをばらばらに並べかえます。どれか一枚の絵のカード(手前に位置している方がやりやすい)を選びその言葉を覚えておいて、左手をそのカードの隣の位置に持って来て、ボトムの絵のカードを密かにそっとテーブルの上に置きます。<写真7>
    写真7
    そうしたら、右手で右の方に位置する絵のカード一枚を取って裏返ししながら、「尻取りは表を使っても裏を使ってもかまいません。」と言う。このとき、左手の位置をそっとずらせて、先程選んだカードの上に左手のカード全部を置いてしまいます。<写真8>
    写真8
    そして、その右手で第1回の予言に使ったLとDのカードを拾い、その上に重ねて、そのカード全部を取りあげます。
  6. これで絵のカードが一枚すりかえられたことになります。そうしたら、覚えたカードの言葉の最初と最後の文字の文字カードを探して、それを裏向きにして観客の前に予言として置きます。例えば選んだ絵のカードがtrainであれば、「T, N」の2枚を予言にするという要領です。
  7. なお、この動作ではボトムに隠した絵のカードを見られないように細心の注意を払う必要があります。これで二度目の予言は上手く行きます。
  8. 最後の第3回目の予言では、文字のカードのすりかえはやらないことにしましょう。この場合、当然並べ方が違っても、同じ文字の組み合わせが再び現れることになるので、予言の文字カード2枚は取り替えるフリだけして、実際には、第2回と同じ2枚の文字カードを予言として提示すればいいのです。
  9. どちらかと言うと、ややしつこい奇術ですから、3回で終わりくらいが丁度よいでしょう。それ以上何回もやると観客が退屈もするし、種もばれやすくなります。

    絵札作成素材(表):クリックでプリント用に拡大
    絵札作成素材(裏):クリックでプリント用に拡大

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