<解説>
この奇術は1951年出版の柴田直光師の名著「奇術種明かし」に紹介されていますが、その原典は中国の古書「中外戯法図説」であるとされています。よく見ると、これは、さすがに最古の漢字文化を誇る中国の古典という感じを与える巧妙な原理です。いくら工夫しても、アルファベットや仮名ではどうもうまく同じようなデザインできません。なお、原案では、「斗」という字が用いられていますが、この文字だけが、ちょっと違和感がある使い方をしています。その後、「斗」の代わりに「臼」という字を用いるという案が提案されました。その方が明らかに優れていると認められます。中国の字体ではそれがいいかどうかわかりませんが、日本では「臼」を使う案に賛成です。
<効果>
文字が書かれた数枚のカードを示し、観客にその中の一つの文字を選ばせます。そして、カードを二列にして、数回並べかえをしながら、上段にあるか?下段にあるか?と質問します。ここで、ユニークな点は、経木のようなものを使って、第一問の時点から、観客が選んだ漢字を少しづつ描いていくという工夫です。最後に、選ばれた文字が完成してクライマックスとなります。
<用具>
- 求 平 臼 米 半 元 非 王
と8つの文字が書かれたカードを用います。これは楷書で画くのが最善です。
<写真1>
この見本は中抜きになっていますから、中をそれぞれ赤、橙、黄色、緑、青、紫、茶、白に色分けしてはいかがでしょうか。そうすると眼を楽しませてくれます。
<写真1>
- 文字を描くために、経木のようなカード7枚が用いられます。
<写真2>
<写真2>
<準備>
カードを上から
求 平 臼 米 半 元 非 王
の順にセットしておきます。
<方法>
- まず、8枚の漢字カードを次のように並べて見せます。
求 平 臼 米 半 元 非 王
そして、「この文はお読めになりますか。これは『平臼の米、半元を求むるは王に非ず』と読むのです。」と説明します。
- ここでこの8個の漢字のなかから好きな漢字一文字を心に選んでもらいます。
- 次に、これを次の順で拾い上げて上へ上へと重ねていきます。
求 元 非 米 平 王 臼 半
その結果、一番上が「半」になります。
- ここで、この8枚の漢字を観客の方に向けて、
術者からみて左上から次の順で二列に並べます。<写真3>
<写真3>
1 2 3 4
5 6 7 8
1の位置が「半」になります。そして、まず、観客に心に選んだ漢字が上の列の中にあるか、下の列の中にあるかを質問します。ここで、「お客様のお選びの文字がだいたい分かりました。」と言いながら、両面にデザインのある板を一枚取り、観客の前に置くのですが、このとき観客が選んだ列が観客側だったら「―――」、術者側だったら「- -」を上向きにして観客の前に置きます。このとき、テーブルに白いテーブルクロスが敷いてない場合には白い紙を下に敷くのもいいでしょう。
- ここで、8枚のカードを拾いあげるのですが、上記の二列を次の順で拾いあげて、上へ上へと重ねていくようにします。
1 5 2 6 3 7 4 8
その結果は、一番上が「求」になるでしょう。
- そして、これを再び3項に示した順で再び二列に並べます。<写真4>今度は、1は「求」になるでしょう。そして、観客の選んだ漢字が上にあるか下にあるかを質問します。そして、その答えを聞いて、やはり両面にデザインのある板を取り、指定の列が観客側だったら「―――」を上向きに、術者側だったら、「- -」を上向きにテーブルの上に置きます。その位置は、前の板より術者側に約4~5cm離れたところです。そして、「お客様の文字はほとんど完璧に分かりました。」と言います。
<写真4>
- ここで、再び、4項の順でカードを拾いあげ、3項の順でカードを二列に並べます。<写真5>このとき、1は再び「半」になるでしょう。そして、選ばれた文字が上にあるか下にあるかをもう一度質問します。その答えを聞いて、やはり両面にデザインのある板を取り、指定の列が観客側だったら「―――」、術者側だったら「- -」を上向きにそれをテーブルの上に置きますが、置く位置は、前の二つの板の真ん中です。
<写真5>
- そして、このとき、三枚の板の並びを見れば、どの文字が分かりますから、<写真6>の要領で、残りの板を付け加えて漢字の形を完成します。なお、演出としては、最初から観客が選んだ漢字が分かっていたという風を装うことが大切です。
<写真6>
横向きの3本を見て、縦棒を1本ないし2本加える。
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Photo: study by CodyR