<解説>
この奇術はパーベルという作者の作品として、JMA「奇術界報」400号に高木重朗氏が紹介しています。筆者2002年TAMCの例会で紹介したことがありますが、今回、デザインと色彩を一新して再作製してみました。原作は兎のデザインがその特徴ですが、筆者はそれに見た目の印象を強くするための色彩をほどこすことを考えました。つまり、バックの色を紫をベースとすることとして、笑い兎は赤、泣き兎は青の色が基調となるグラデーションの配色をバックにほどこしたのです。
<現象>
- シルクハットから二枚のカードを取り出します。一枚は「笑い兎」、もう一枚は「泣き兎」のカードです。
- 二枚を裏向きにしてよく交ぜて、「泣き兎」をシルクハットに戻します。
- 残ったのは何かと聞く。観客は「笑い兎」と答えますが、残っているのは「泣き兎」でハットから「笑い兎」を取り出して見せます。
- 同じことをもう一度やることにします。今度は「笑い兎」を見せて、ハットに入れます。
- 残ったのは何かと聞きます。観客は「泣き兎」と答えます、残っているのは「笑い兎」で、ハットから「泣き兎」を取り出して見せます。
<用具>
用いるのは「笑い兎カード」、「泣き兎カード」、それに片側が笑い兎、反対側が泣き兎にデザインされた「種カード」の合計3枚です。デザインが上手く工夫されていて、種の斜めカードは普通の斜めカードのように、面積の1/2も隠す必要はなく、だいたいカードの表面の右下1/6くらいが隠れれば十分にデザインされています。したがって、その原理を活用したハンドリングを工夫すれば、一見信じられない現象が起こすことができるのです。兎の入れ物としてシルクハットを用いるのがスマートですが、筆者はボール紙で作ったシルクハットを用います。これは兎のカードが入るに適当な大きさと、カードがチラリとしないように十分な深さがあるようにデザインして工作すればいいのです。
<準備>
シルクハットに3枚のカードを入れておきます。カードは表が術者の方を向くように立てかけます。3枚は、手前から「泣き兎」、「種のカード」、「笑い兎」の順としましょう。
なお、「種カード」は笑い兎が上を向いていなければなりません。
<方法>
- まず、3枚のうち手前の2枚を右手で取り出します。まだ、裏が観客の方を向いている状態です。
- 両手で1枚づつカードを持ち裏面を示して「ここに2枚のカードがあります。」と言います。
- 2枚のカードを少しずらせて重ねます。こちら側が「泣き兎」向こう側が「種カード」です。<写真1>「種カード」は「笑い兎」が見えており、「泣き兎」部分は隠されている位置になっています。
写真1
- 右手で下側を持ち、カード2枚を左右にひっくり返し、表を観客の方に向けます。<写真2>
写真2
- ここで、手前のカード(「種カード」)を左手で持ちます。このときカードの左下を左手の四指で持つので、ちょうど、種の泣き兎部分が指で隠れるようになります。同時に、右手で向こう側のカードを持ちます。そして、左右の手を少し離すようにします。<写真3>この時点で両手は左右対称になります。
写真3
- 右手を少し上げて見せ「この青っぽいカードには泣き兎が描かれています。」と言います。
- 次に左手を上げて「こちらの赤っぽいカードには笑い兎が描かれています。」と言います。
- 再びカードを重ねます。左手の種カードは右手のカードの手前でその陰になるようします。
- 右手で下の方を持ち、2枚のカードを左右にひっくり返し、カードの裏が観客の方を向くようにします。
- さて、ここで両手を使って2枚のカードを適当に混ぜ合わせ、観客がどっちがどっちのカードか判らない様にします。実際には「泣きカード」が手前に来るようにします。
- 次に、2枚のカードのうち「泣き兎」のカードを左手で取り、その表を観客に示します。<写真4>そして、それをシルクハットに入れながら、「泣き兎をここにしまいます。」と説明します。
写真4
- 観客に対し「さて、手に残っているのは何のカードでしょうか。」と質問します。観客は「笑いカード」と答えるでしょう。
- そこで、手のカードを一旦右手で持ち、その左上に左手の四指を掛けてカードを上下にひっくり返します。種の「笑い兎」の部分はちょうど左手の四指で隠れるようになります。<写真5>
写真5
- 右手でシルクハットのなかの「笑い兎」のカードを取り出し、観客に示します。<写真6>そして「いえいえ、こちらが笑い兎です。」と言います。
写真6
- 再び2枚のカードを重ねるのですが、観客側が「笑い兎」のカードになるようにし、種はその陰に隠れるようにします。
- 右手でカードの下を持ち、2枚のカードを左右にひっくり返します。
- 再び両手で2枚のカードをよく混ぜます。このときに種のカードが手前になるようにします。
- そして、今度は種のカードの左上の泣き兎の部分を左手の四指で押さえながら、
そのカードを上下にひっくり返します。<写真7>観客にはそれが笑い兎に見える
でしょう。そして、このカードをシルクハットに入れて「笑い兎をここにしまいます。」と言います。
写真7
- 「さあ、今度は残ったカードは何でしょうか。」と質問します。観客は「泣き兎」と答えるでしょう。
- 右手でシルクハットの中から「泣き兎」のカードを取り出し、それを観客に示します。そして、「いえいえ、泣き兎はこちらです。」と言います。<写真8>
写真8
- 左手で持っていたカードの表を観客に向けて「笑い兎」を示します。<写真9>
写真9
- これで、演技は終了ですが、この時点では、二枚のカード堂々とあらためることができる状態になっています。実演では、カードを持つ指を開いて、カードの表面を公明正大に見せるくらいが自然でしょう。動作を工夫してみてください。
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Photo: study by CodyR