これと同じ現象は普通のデックだけで行う方法も沢山ありますが、このハーフカードを使うと、もっと簡単に、もっと不思議にできます。また、ルーティーンの中に1つだけ有名なテクニックを使っているので愛好家の方にも面白いと思います。
初めに、このトリックで使用するハーフカード(以下HCと記す)の作り方を解説します。
(HCの作り方)
デックと同色同デザインで要らなくなったデックから3枚のエース(クラブ、ダイヤ、ハート)を取り出して、それぞれを縦に真半分カットします<写真1>。
写真1
更に、同じデックから種類の異なった3枚のカード、ここではクラブの8、ハートの8、ダイヤの3(以下C8,H8,D3)を取り出します。この3枚をフェイスダウンにして、それぞれの左側半分にカットしたエースをのりで貼り付けます<写真2>。順番は関係ありません。
写真2の上段は3枚のフェース側で、下段はその3枚を裏向きに返してカットしたエースを左側に、のり付けした状態です。
写真2
最初からダブルフェイスカードをお持ちの方は、表面がエース(クラブ、ハート、ダイヤ)で裏面が種類の異なった3枚を選びます。さらに、今度は要らなくなったデックから裏面付きの3枚を適当に選び、縦半分にカットしてその裏面をエースの右側半分に貼り付けてもハーフカードができます。
準備
レギュラーデックからHC(ハーフカード)と同じC8,H8,D3とジョーカーを取り除きます。この4枚のカードはトリックには使用しません。さらに、同じデックから4枚のエースを抜き出しておきます。
デックをフェイスアップで左手に持ち、フェイスにHC(ハーフカード)のCAを重ねて、その上にHCのDA、その上にHCのHAを、それぞれのエース面を左側にして重ねます。最後に、その上にレギュラーのスペードのA(以下SA)を重ねます。さらに、デックのトップにレギュラーのエース3枚をセットします。
デックをスプレッドすると<写真3>のようにセットされています(SAの左側3枚のAはHC)。以上のデックをケースに入れておきます。
写真3
手順
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左手でケースを持ち、右手はデックをフェイスアップで取り出します。ボトムにSAが見えています。左手はケースをコート左横のポケットへ入れます。そしてデックをフェイスアップで左手のディーリングポジションに持ち、左手の小指をデックのインナーエンドに付けます。もちろん、デックのフェイスは少し客の方へ向けています。
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左手の親指はフェイスの4枚を右手に広げて(あまり広げすぎない)、エースを見せてから右手は4枚を揃えてフェイスアップでパフォーマーの直ぐ前のテーブルへ置きます<写真4>。その時にカードがずれてHC(ハーフカード)の裏面が見えないように注意します。
写真4
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右手は左手のデックをフェイスダウンにします。そしてトップ3枚のカードを右手に取り、先に置いたエースパケットの右上に置きます<写真5>。これはレギュラーのエース3枚です。
写真5
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同じように3枚セットのカードをデックのトップから取り、エースパケットの左横へ置いていくのを3回繰り返します。
デックをテーブルの左サイドに置きます<写真6>。
写真6
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次に、右手はテーブルからHC(ハーフカード)のエースパケットを持ち上げて左手に置き、右手に広げて示します。右手は持ち方を変えて<写真7>のようにその両エンドを上から握ります。
写真7
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ここからの操作は、左手パケットの下に、右手に広げた4枚のエースのうちCAだけを左手パケットの下に取る動作になります。まず、左手はテーブルの一番左端のパケットをフェイスダウンで取り、左手のディーリングポジションに持ちます。そして左手を右手に近づけて、右手のフェイスアップのエースを完全にカバーします<写真8>。
写真8
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この位置に関しては、右手の最初のエース(ここではCA)の左エッジを左手に持っているパケットの左エッジに揃えます。そして、左手の親指と左手の人さし指のベースでエースをフェイスダウンパケットの上から挟みます。もっと詳しく解説すると、左手は右手に近づけた時に、左手パケットの左上コーナーを左手の親指と人さし指のベースで挟んでいる状態で、左手の中指、薬指、小指をパケットの右サイドから放します。するとパケットと左手の平の間に隙間ができます<写真9>。
写真9
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パケットは左手の親指と人さし指だけで持っている形になります。この隙間に右手のエースの左エッジを入れます<写真8>。
次に、左手のパケットで<写真8>のように右手のエースを完全にカバーした時に右手の左端のエース(CA)の左サイドをフェイスダウンパケットの下で左手の親指のベースにピタッと付けます。そして左手の親指でパケットの左上コーナーを押さえて、右手の最初のエース(CA)を左手のパケットの下に取り去ります<写真10>。この時にHC(ハーフカード)の裏面が見えないように注意します。左手はパケットをテーブルの元の位置(左端)に戻します。
写真10
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同じ動作を、次の(左から2番目)3枚のパケットと右手のエース(DA)で繰り返し、テーブルの元の位置に戻します。そして再度、3番目のパケットと右手のエース(HA)で繰り返してもとの位置に戻します。現在は<写真11>の形になっています。続けて右手は持っている最後のSAを右手だけでパチンとスナップして、実際にエース1枚だということを示します。
写真11
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<写真 8~10>の動作の時、客によってはパフォーマーが右手のエースを左手パケットの下に取らないで、右手のエースパケットの下へスライドバックしていると思っています(パフォーマーも相手にその事を暗に思わせています)。そのためにパフォーマーは最後のエースをスナップして確かに1枚のカードだということを示したのです。
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次に左手はテーブルの最後のパケット(レギュラーエース)を上から軽く押さえます。そして右手は持っているSAをフェイスアップにして左手が押さえているパケットの右サイドから下へ滑り込ませます<写真12>。4枚のレギュラーエースが集まりました。
写真12
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今、テーブル上は4組のフェイスダウンパケットが並んでいて、客は各パケットのボトムはフェイスアップのエースだと思っています。実際は右端のパケットを除いて他の3組のボトムはHC(ハーフカード)のエース面が左側にきています。
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次に左手はテーブルの左端のパケットの左サイドを押さえ、右手はそのトップカードを取り、左手で押さえているパケットの下に滑り込ませて、パケットを左手にすくい取ります。そして広げてフェイスアップのエース(ここではCA)を示します
<写真13>。広げすぎるとHC(ハーフカード)の裏面が見えてしまうので注意します。
写真13
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パケットを揃えてその左サイドを左手の指先で掴み、ここで4枚のフェイスダウンカードに見せる有名なエルムズレイカウントを行い、エース(CA)が消えたことを示します<写真14>。HC(ハーフカード)はボトムにきています。
写真14
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次に右手はパケットのアウターエンドを掴み、パフォーマーの方へ縦にターンしてフェイスアップにします。そしてカードを広げて4枚のフェイスアップカードを示します<写真15>。ここでも広げすぎないように注意します。
写真15
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左手はそのファンを持ったまま内側にターンしてカードの裏面をチラッと示します。もちろんHC(ハーフカード)のエース面は見えません<写真16>。
写真16
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左手を返して再びパケットをフェイスアップに戻します。右手はファンのC8を取り(この時に裏面のHC(ハーフカード)が見えないように注意)、テーブルへフェイスアップで置きます。残りの3枚も1枚ずつ、右手で先に置いたC8の左横一列にフェイスアップで置いていきます。
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または、ここで『オーラムサトルティ』というテクニックを使うことも出来ます。つまり、左手はファンの両サイドを見せた後フェイスアップで保持しています。右手は最初のC8(HC)をフェイスアップでテーブルへ置きます。残りの3枚を1枚ずつ取ったときにチラッとその裏面を示してから、先に置いたカードの左横へフェイスアップで一列に置いていきます。
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以上の動作を次のパケットで繰り返します。つまり、右手はパケットのトップカードを取り、ボトムへ入れてパケットを左手にすくい取り、ファンに広げて1枚のエース(DA)を示し、ファンを左手に揃えてエルムズレイカウントを行い、DAを消してHC(ハーフカード)をボトムに持ってきます。
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そして、右手は左手のパケットを縦にフェイスアップにターンして、ファンに広げて左手に4枚のフェイスカードを示します。
左手を返してファンの裏面を<写真16>のようにチラッと見せてフェイスアップに戻します。
今度は、右手で左手から2枚のフェイスアップカードを取り、両手にそれぞれ2枚のフェイスアップカードを示します。
その表面は客の方を向いています。そして、両手を返してペアの裏面をチラッと見せてから元のフェイスアップに戻します<写真17、18>。
写真17
写真18
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右手は持っているペアのフェイスカードを右手の親指で、既にテーブルへ置いたHC(ハーフカード)にフェイスアップで重ねます。ほとんど同時に左手はペアのフェイスカードを左手の親指でテーブルの左から2番目のカードに重ねます<写真19>。
写真19
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両手に1枚ずつ残っている最後の2枚は、再び両手を返してカードの裏面をチラッと見せ、元に戻してテーブルの1枚だけのカードに重ねます。そうすると、それぞれのパケットは2枚のカードになり、一番右端はHC(ハーフカード)のパケットです。
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3番目のエースの消し方は、オーラムサトルティの方法か、2番目の両手にペアで見せる方法のどちらかを繰り返します。すると右端のパケットは3枚のHC(ハーフカード)です。右手は残っている最後のフェイスダウンパケットのトップカードを取り、ボトムに入れてパケットを左手に取りファンにしてSAを示します。ファンを閉じてエルムズレイカウントでSAを消します。
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しかし、パケットを縦にターンすると、今度は1枚のフェイスダウンカードが現れて、さらにファンにすると<写真20>のようにエース3枚のフェイスアップカードが客の目に入ります。
写真20
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右手はフェイスアップカードのエースを1枚ずつテーブルに置いていき、最後にフェイスダウンのSAをフェイスアップにして、先に置いたエースに加えます<写真21>。客は別のカード消失を思っていたでしょうから、これは驚きのクライマックスになります。
写真21
ここで2つの終わり方があります。
1つ目は、デックをフェイスアップで左手に持ちます。そして、HC(ハーフカード)がデックのフェイスカードになるように単に右手でフェイスアップパケットを集めてデックのボトムにおき、さらに残っているレギュラーエースパケットをデックのトップにおきます。最後にSAをボトムに回すと次の席で同じ現象を繰り返す準備ができます。
2つ目は、右手で一番左端のフェイスアップパケットを取りあげて左手におきます。さらに右手で2番目のパケットを取り上げて、今度は左手のパケットの下におきます。3番目のパケットも同様に左手のパケットの下におきます。
次にHC(ハーフカード)のパケットを取り上げて、これも同様に左手のパケットの下におきますが、このHCパケットだけダイレクトリアパームの位置に起きます。
即ち、HCパケットは上のパケットより少しインジョグしたギャンブラーズパームの位置になります。右手は直ぐにHCパケットから上のパケットの両エンドを掴み取り、テーブルに残っているレギュラーエースパケットに重ねます。そして右手は全パケットをデックのフェイスおきます。その間に左手はパームカードと共にコートの左横ポケットへ入れてHCパケットを放し、前もって入れておいたカードケースを取り出します。
パケットを集めてからは、HCを片付けるのにゆっくり時間をかけてマイペースで行います。決してルーティーンの一部として行わないで下さい。
また、デックの表面においたHCパケットを片付ける他の方法は、左手に持ったフェイスアップデックのフェイスにあるHCパケットの下に左手小指のブレイクを作り、左手はデックを持ったままポケットに入れます。そしてポケットの中で、左手の親指でHCパケットだけを放して残りのデックと共にカードケースを取り出します。
次はオーラム サトルティのバリエーションです。
(1)HC(ハーフカード)がパケットのフェイスから2番目にある場合(左手にパケットを持っています)。
左手のフェイスアップカードを右手でファンに広げます。
1番目のフェイスカードを右手に取ります。左手には3枚のファンが残ります。
両手を返して、左手ファンの裏面と右手の1枚カードの裏面をチラッと示します。両手を元に戻します。右手は持っているカードをフェイスアップでテーブルの右側に置きます。
続けて左手の親指は持っている3枚カードのフェイスカード(実際はHC)を先にテーブルに置いたカードの左横へフェイスアップで置きます。
残っている2枚の内1枚を右手に取り、両手を返してその裏面をチラッと示します。
両手を戻してそれぞれのカードをフェイスアップでテーブルに並べます。4枚の横一列に並んだカードでHCは左端から3番目にきています。
(2)HC(ハーフカード)がパケットのフェイスから3番目にある場合。
左手のフェイスアップカードをファンに広げます。
その内2枚を右手に取ります。
右手と左手のフェイスカードをそれぞれの親指でテーブルへフェイスアップで横並びに置きます。
両手を返して残っている2枚の裏面をチラッと見せて、元どおりにフェイスアップでテーブルへ既に置いた2枚の左側へ置きます。
HCは左端から3番目にきています。
もちろん、上記のバリエーションは、『フレキシブル カウント』を用いることもできます。HCはそのA(エース)面を左側にしてボトムにセット。
4枚のカードをフェイスダウンでその左サイドの中央を左手の指先に持ちます。右手は初めの2枚をトップから1枚ずつカウントしながら右手の指先と言うよりむしろ右手のディーリングポジションに剥ぎ取ります。
3枚目をカウントしながら取るときに、右手は左手から全てのカードを取りますが、左手の指は右手のボトムカードを掴み取ります。
すると一見、4枚目の1枚のカードが左手にあります。
このカードを右手のカードの上に取ります。カウントの間、HCのA面は見えませんがHCはボトム(フェイス)から2番目にきています。
HCをボトムから3番目にするには、上記ルーティーンの最後で、左手にある1枚のカードを右手のカードの下に取ります。HCはボトムから3番目にきています。
『M.I.N.T. vol.Ⅰ』by Edward Marlo、P.195~200