平川一彦

ベーシック・ムーブ

第7回

オーバーハンドシャッフル

 オーバーハンドシャッフルの解説に入りますが、これを行うには、その前にすべき動作がありますので、それを詳しく解説します。
皆さんの中には、この動作は必要ないと思う方もいるかもしれませんが、クロースアップマジックを見せる時、綺麗に見せるための、また、良い印象を与えるための、大切な動作ですので、読んで下さい。

  1. デックの入っているカードケースがテーブル上の、カーディシャンの真正面に置いてある場合と少し右側に置いてある場合は、カーディシャンはそのカードケースを右手で取り上げて、体の前にある左手に渡し、右手の親指でカードケースのフタを開けます。
    右手でデックを取り出して、左手は空になったケースをテーブル上の左横に置きます。

  2. もし、カードケースがカーディシャンより左側に置いてある場合は、左手でカードケースを取り上げて、左手を体の前に持ってきて右手でフタを開けます。
    右手はデックを取り出して、左手はケースをテーブル上の左横に置きます。

  3. 前の動作が終わったら、右手は、ケースから出したデックを左手のディーリングポジションに置きます。
    その時の両手の位置は、<写真1>のようになっています。

    写真1
    写真1

    すなわち、デックは左手の平から少し浮いていて、右手はデックを少し右斜め上から、右手親指の指先をインナーエンドに付けて右手中指の指先をアウターエンドに付けてデックの中央より少し右側を握っています。

  4. 右手人さし指は、デックのトップに軽く曲げて付けます。 右手薬指と右手小指は、単に右手中指に沿っているだけです。 右手中指の指先は、左手人さし指にほとんどタッチするぐらいです。 つまり、左手にあるデックの右斜め上から、右手の親指と中指と人さし指でデックの右端近くを握っている形になります。
    再び<写真1>参照。 両手は力を入れないで軽くデックを握っています。

オーバーハンドシャッフル

    このシャッフルは日本では一般の人にはあまり見なれない動作ですが、欧米では、昔から普通に使われていたようです。
    シャッフルに入る前に、これを理解するために以下の写真の、デックを横に立てた時の各部の言い方を覚えて下さい<写真2A・2B>

    写真2A
    写真2A
    写真2B
    写真2B

    次に右手は<写真1>の形から、右手の親指と中指を軸として、デックの左サイドを左手の平に付けたまま、デックの右側だけを上へ持ち上げます。
    するとデックは自然と左手の平に横立ちします。 すぐに左手の中指、薬指、小指の指先をデックのフェイスに付けます。 右手を省略した<写真3・4>参照。

    写真3
    写真3
    写真4
    写真4

    この時の左手の指の位置が非常に大切です、特に人さし指と小指は重要な役目を持っています。
    デックのアウターエンドのボトムコーナーは左手人さし指の第二関節に付いていて、その人さし指は、デックのアウターエンドに沿っています。

    <写真5>を見て下さい。左手人さし指はデックのアウターエンドに沿っていますね。 これは、なぜかと言うと、シャッフルをしている時に、アウターエンドからカードが前に出ないようにするため、言い換えると、デックのアウターエンドを揃える役目をしています。

    写真5
    写真5

    また他に、アウトジョグ(後に解説してます。)をして、続けてシャッフルをした時に、そのジョグカードがデックの中に入っていかないように、ストッパーの役目もしているのです。

    デックのボトムサイドは、左手の平を斜め下に横切っています。
    左手の中指、薬指、小指はデックのフェイスに軽く曲げて付いていますが、左手小指の第一関節から先をインナーエンドから出します。(これが師匠の言った“ちょこん”です。)<写真5>参照。

    左手親指は、デックのトップの中央からアウターエンド近くに付いていますが、この位置は、手の大きさやカードサイズの違いによって変ります。再び<写真4>参照。
    デック全体は、左手の中指、薬指、小指に対して約45度から50度くらい右に傾いています。

    オーバーハンドシャッフルの時は、デックを持ったら、左手はすぐ、この形になるように癖をつけておくと良いと思います。


 私の方法は、もっと簡単です。

    つまり、<写真1>の形から、デックの右サイドに付いている左手の中指、薬指、小指の3本を、こぶし状に握ると、右手をほとんど動かさなくても自然と<写真6>の形になります。

    写真6
    写真6

    右手の指の位置は、まず、右手親指は、デックのインナーエンドのトップコーナー近くに、そして、右手中指と右手薬指はアウターエンドのトップコーナー近くに、そして、右手人さし指は、トップサイドの中央より少し前方へそれぞれ付けてデックを握っています。
    右手小指は、単に右手薬指に沿っているだけです。
    この両手の形は、カードトリックを演じる時にジョグやブレイクやコントロールなどのテクニックに必要ですので、正確に覚えて下さい。そして、このシャッフルの時は、両手がこの形になるように練習して下さい。


読むと、ものすごく長く感じますが覚えると、ほんの、1・2秒で、この形になります。 ここまで来たら、いよいよシャッフルに入ります。 最初に、1枚ずつシャッフルしていく方法です。

  1. 最初に、両手は力を入れずに、リラックスしてデックを握っています。

  2. 先ず、左手親指の第一関節から先(指先)をデックのトップカードの中央から上部にピタッとくっ付けて、トップカードを押さえます<写真7>

    写真7
    写真7
  3. 次に、左手は動かさずに、右手の親指、中指、薬指と人さし指でトップカード以外の残りのデックを上に引き上げます<写真8>

    写真8
    写真8
  4. 右手がデックを左手から完全に引き上げると、左手親指で押さえていたトップカードだけが左手の平に残ります<写真9>

    写真9
    写真9
  5. 次に、左手の平にあるカードのバックに付いている左手親指をバックから左側へ放します。

  6. 右手はデックを握ったまま、左手の平に残ったカードのバックへ右手のデックを置きに行きます<写真10>

    写真10
    写真10
  7. 右手のデックが左手のカードのバックへ付いたら、左手親指の指先を、その右手のデックのトップに付けて、すぐに右手は、再び、トップカード以外の残りのデックを上へ引き上げます。

  8. すると、右手のデックのトップカードが前回と同じように、左手親指ではぎとられて、左手のカードの上に残ります。
    この動作の繰り返しがオーバーハンドシャッフルです。

 上記は、1枚ずつシャッフルしましたが、他に左手親指で、初めから数枚のカードをはぎとる方法もあります。

     この方法は、左手親指で数枚のカードをはぎ取ると言うより、先ず、左手親指のほとんどの指先をデックのトップサイドの中央の縁(ヘリ)に付けて、少し力を入れて押さえます。

     次に、右手はデックを引き上げます。
    すると、数枚のカードが左手の平に残ります。この繰り返しです。

 最初のシャッフルのスピードは、約1秒間に2枚のカードを1枚ずつシャッフルすると言われていますが、私は、何もその通りにしなくても良いと思います。

 もう一方のシャッフルも7・8回ぐらいで終わるようにと言われていますか、これも私は、その通りでなく、トリックによっては、5・6回で終わってもかまわないと思います。
 デックは力を入れて保持する必要はありません。リラックスです。

また、この二つのシャッフルは、ほとんど右手だけが動き、左手は、その親指の指先を右手のデックのトップカードに付けたり、放したりする動きと右手のデックを左手カードの上に置きに行った時の衝撃による動きぐらいです。

 また、このシャッフルは、最初の練習の時は手元を見るでしょうが、慣れたら手元を見ないで練習して下さい。もちろん実演の時は、相手(客)を見ながらシャッフルします。このシャッフルする動作をシャッフル・アクションと言います。
それから、手品の解説書に、このシャッフルの場合、左手親指でデックのトップカードをはぎ取り、その繰り返しをする、と書いてあります。これを読んだ人は、右手は動かさず左手だけが動くように思いがちです。

 注意して下さい。左手は少ししか動かず、右手が上下に左手より速く動きます。
以上がオーバーハンドシャッフルの基本ですが、皆さんがこれまでやっていたシャッフル・アクションと同じでしょうか。同じだったら最高です。

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