平川一彦

ベーシック・ムーブ

第18回

ストラドル・ディーリングポジション

 今までの解説を読んでみて如何でしたでしょうか。文章は長く、しかも、内容も詳細なので覚えるのに大変だったでしょう? 一つのテクニックやルーティーンを日本語で解説する場合に、短かい文章では、その真意を上手く相手に伝えづらいので、どうしても長い文章になってしまいます。 しかし、それを正確に覚えるには、長い文章の方がベストなので、根気良く覚えて下さい。そうすれば必ず良い結果が現れます。

さて次は、デックをフェイスダウン、あるいは、フェイスアップで両手の間に広げるテクニックですが、これまでの私の解説でもそうでしたが、文中の“右”、“左”は、パフォーマー、つまり、私から見た右、左であって、そうでない場合は、“客”(相手)から見て右、左と書いています。 このテクニックは、相手にカードを抜かせて覚えてもらう場合とか、パフォーマーが自分の思うカードを捜す場合などに使う方法で、カードマジックでは、非常に良く使う大切なテクニックです。 このテクニックでは、左手のデックの握り方が今までとは少し違っていて、“ストラドル・ディーリング・ポジション”という握り方をします。 “ストラドル”とは、“~をまたぐ”、“またがる”、“両脚を広げること”という意味で、ここでは、人さし指と小指を大きく広げて、デックをまたいでいる事です。

<写真1>を見て下さい。左手の小指がデックのインナーエンドに沿って付いていますね。これは、親指でカードを右方向へ押し出した時に、カードが内側へ出ないようにすると共に、スムーズに滑らせるためです。 また、左手の親指で押し出されたカードを受け取る側の右手の小指も、左手の小指と同様に位置します。

写真1
写真1

ストラドル・ディーリングポジション

  1. 右手はフェイスダウンのデックを左手のディーリングポジションに置きます。 デックのアウターエンドの下側の縁は、左手の人さし指の第一関節と第二関節を横切っています。
  2. 左手の小指をデックのインナーエンドに回して付けますが、そのインナーエンドの下側の縁は、その右コーナー付近が左手の小指の第一関節と第二関節の中間にタッチしています<写真2>。 しかし、これらは、手の大きさによって変ります。
  3. 写真2
    写真2
  4. 左手は、デックをストラドル・ディーリングポジションに握ったら、すぐに左手の親指を左側へ移動して、親指のつめの内側(左横)をトップカードの左サイドの縁に付けます。
  5. 右手はデックを放して、そのまま右手首を右側へターンして手の平を上に向けると、左手に持っているデックの右横に位置します。 その時の右手の中指と薬指の指先のボール部が、左手の中指と薬指の甲部の第二関節付近に軽くタッチしています。
  6. 右手の平を上に向けると同時に、左手の親指はトップカード数枚を右方向つまり、右手の平の方へ押し出します<写真3>
  7. 写真3
    写真3
  8. そして、その押し出されたカードの右サイドのインナーコーナー付近を右手の親指と右手の人さし指の付け根に挟むと、右手の親指は自然とトップカードのバックへタッチします。
  9. また、右手の親指と人さし指の付け根で、カードを挟むと同時に右手の小指を、左手から受け取ったカードのインナーエンドに付けます。 続けて、左手の親指を元に戻して、次の数枚を右方向へ押し出します。 この動作を繰り返しながら、カードが右方向へ動いて行くと同時に、右手も少しずつ右方向へ動かしていきます<写真4>
  10. 写真4
    写真4
  11. 左手の親指で5、6回位、押し出すと、左手の人さし指は、自然とアウターエンドから外れて、左手に持っているカードの、フェイスに付いている左手の中指の方へ動いていきます。
  12. これまでのポイントは、左手の親指でカードを右手の平の方へ動かしていく時に、そのカードの両エンドが左手の人さし指と小指の間を滑って、右手の小指の上に移動していく事です。 右手の人さし指は、アウターエンドには付けません。 つまり、ストラドルではないのです。カードのインナーライトコーナー付近を親指と人さし指の付け根で挟んでいるだけです。 左手の親指で押し出されたカードを右手の人さし指、中指、薬指で交互に右手の平の中に引き込む人もいますが、私は、それはしません。
  13. 右方向へスプレッドしていくときに、真っすぐ一直線に広げていかないで、ほんの少し弓なり(凸状)に、言い換えると、弧を描くように広げていった方が、より美しく見えるし、また、広げ易いです<写真5>。 また、スプレッドしていく時は、両手の人さし指、中指、薬指の3本を広げたカードの下で真っすぐに伸ばして、カードを支えます。 また、この3本の指の位置は、カードをより広く、スプレッドする事ができます。 全て広げ終った時の両手は左右対称になっています。このスプレッドを前から見て下さい。 どう?素敵でしょう?
  14. 写真5
    写真5

 では、1枚のカードを抜いて覚えて下さい。

 ≪ 第17回                         第19回