平川一彦

ベーシック・ムーブ

第19回

リボンスプレッド

 前回は、デックを両手の間にスプレッドしましたが、今度は、それをテーブルの上にサーッとリボン状にスプレッドします。 これは、カードマジックの分野では、“フラリッシュ”と呼ばれていて、見ていて、とてもカッコイイ、派手なアクションです。
 “フラリッシュ”とは、その名の通り、“見せびらかす”、“派手さ”、“見せびらかし”という意味で、動作がスピーディーで、スマートで、そして見ている人を魅了してしまいます。特に、素人の人には、インパクトが強いようです。 私の生徒の1人が、次のように言った事があります。
「私は、先生がカードトリックをする前に、デックをリフルしたり、テーブルの上にスプレッドしたりしているのを見るたびに、何てスマートなアクションなんだろう!私もあのようにやってみたい。と思いました」と。 やっている私は、カードトリックをする前の準備運動みたいなもので、ただ何となく、自分のカードトリックへの気持を高める動作であって、何も、見ている人に見せびらかしている訳ではなかったのです。 しかし、彼の言った事を考えると、見ている人は、そう思うのだと改めてフラリッシュの意味が理解できました。 そういえば、我々の仲間を見回すと、カードトリックをやる前には、全員が、このフラリッシュ、例えば、リフルとスプリング、リフルとチャーリーパス(私も、これです)などをやっています。 “何気なく見せびらかす”何て気分の良いアクションなんだろう! それからは、私の意識の中に、“カードトリックの前はフラリッシュ!”という一種のスローガンみたいなものが出来上がり、今ではもう!
 前置きはこのぐらいにして。

  1. デックを左手にディーリングポジションで持ちます。 それを右手で斜め上から通常より深く、つまり、デック全体をほとんどカバーするぐらいのエンドグリップで握ります。 言い換えると、右手親指の指先のボール部をデックのインナーエンドのほとんど左コーナー近くに付けて、中指のボール部をアウターエンドのほとんど左コーナー近くに付けてデックを握ります。
    右手の人差指は、その指先をデックのほとんど左上コーナー近くのトップに付けておきます <写真1、2>。 この握り方を“カバード・エンドグリップ”と言います。 そして右手は、その握り方のまま、デックのアウターエンドを少し左斜めに向けてテーブルの少し左側へ置きます。
  2. 写真1
    写真1
    写真2
    写真2
  3. 右手はデックを握ったまま、右手の人差指の指先を<写真3>のようにデックの左サイドに付けます。 すると、人差指の第一関節がデックの左サイドの上部の縁にタッチしています <写真3、4>
  4. 写真3
    写真3
    写真4
    写真4
  5. 右手の指先にほんの少し力を加えて、右方向へ小さい弧を描くようにスプレッドしますが、カードがばらばらにならないように右手の親指、中指、人差指で上手くバランスをとります<写真5>
  6. 写真5
    写真5
  7. 広げている際中に右手の人差指は横に真っすぐに伸びていて、スプレッドと共にカードの表面を滑っていきます <写真6>
  8. 写真6
    写真6

 このスプレッドは、右手の力加減に左右されるので、強くても、弱くても上手く広がりません。 何回も練習して、その“コツ”を覚えて下さい。 これは、前回の両手の間のスプレッドに比べて、より長くスプレッドが出来るので、見ている人に、より大きいインパクトを与えます。 このリボンスプレッドは、右手で左から右へ弧を描いてスプレッドしていますが、トリックによっては、一直線にスプレッドする場合もありますし、また、左手で右から左へ一直線にスプレッドする場合もあります。 テーブルの上にスプレッドする場合に、テーブルクロスが掛かっていれば上手く広がりますが、クロスが掛かっていないテーブルの表面では、デックが滑ってしまい、上手く広がりません。 その場合は、右手に力を普通より強く入れて、デックをテーブルへ押し付けながらスプレッドすると、案外きれいに広がりますが、それも100%という訳でもなく、広がっても、きれいな弧にならない場合がありますので、必ず、マットを用意しておきましょう。

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