ジュビリーは隔年の開催で、1997年はちょうど帰国のために参加できませんでした。しかし幸運にも1999年の春にセントルイスに再赴任する事になり、その夏に早速2回目の出演です。
この時の思い出は、トパーズが私のミリオンカードを評価してくれた事もありますが、なにより、ジョン・カルバートの演技を生で見る事ができた事です。すでに89歳という高齢にも関わらず、スライハンドからメンタルに至るまで驚愕の演技でした。その中で私が特に印象に残ったのは、彼が客席に降りて演じたミリオン・シガレットです。それこそ死角のない360度の視線の中でのミリオン・シガレットで、ミスディレクションの自然さが特に頭に焼きついています。
うまく文章で表現できないのですが、私にはジョン・カルバートのミスディレクションがフレッド・カップスやサルバノの演技に通じるところを強く感じました。その感覚やセンスを如何に自分のミリオンカードに活かせるかが、ある意味で私の永遠の課題でもあります。
この年のちょっとしたハプニングは、大会の役員を通じて、ジェードが私に会って日本語を習いたいという希望があると聞かされ、ホテルのレストランで日本語を教える機会があった事です。
そのチャーミングな雰囲気から、彼女は会場のどこでも目立っていました。さすがにこの時はちょっと近づき難い雰囲気だったのか、レストランでは周りのマジシャンが遠巻きに羨望の(?)視線で見ているという状況でした。たまたま日本人向けのステージの予定があり、相談を受けたという事でした。
ラッキーだったのは、ちょうど話が終わった頃に、ジョン・カルバートが声をかけてきてくれた事です。すぐに3人で盛り上がり、ジョンから「良いアイデアがある。君たち2人でショーをやったらどうか?Satoruは独身だろ?」などと、とんでもないジョークを言わるような楽しい一時でした。
後日、ジョンがわざわざサインを入れてその時の写真を送ってくれました。ちょっと写りが悪いですが、私にはその時の雰囲気を思い出すお宝写真です。ちなみに右はその時にもらったジェードのサインです(中国名は陳さんだったのですね)。
この年は、ジュビリーに参加されていた日本の超大物のマジシャンをセントルイスのメンバーにご紹介出来た事も良い思い出です。 ちなみに、この原稿を書いている2011年にジョン・カルバートは100歳になります。2010年もミッドウェスト・マジック・ジュビリーのメインゲストでした。アメリカ人が良く使うフレーズに、”He is ○○years young” (oldではない)という言い方がありますが、彼はまさにその通りです。100才になっても、NY・ブロードウェイやロンドン・パラディウムでの公演が予定されているそうです。いつまでも、いつまでもご活躍される事を祈念しています。