コロンブスの卵とは、アメリカ大陸の発見は誰でもできたことだと批判する人々に対して、コロンブスはゆで卵を立てることを試みさせ、誰にもできないのを見て、卵の尻をつぶして立ててみせたという逸話から、「誰でもできる事でも最初に実行するのは難しい」という例えです。マジックで言えば「すでに誰かが演じている事をマスターする」事と、「誰もやっていない現象を創り出す」事には雲泥の差がある事をこの逸話が示唆しています。
しかし私が「コロンブスの卵」の逸話が非常に面白いと思うのは、「コロンブスの卵」の逸話から、「卵は、そのままでは立てられない」というイメージ(先入観)が生まれる事です。そして、その先入観の利用が今回のテーマです。
子供の頃に読んだ本に、「生卵を立てる」というマジックの解説がありました。それは、まず少量の塩の上に卵を立て、その後余分の塩を息で吹き飛ばすという科学マジックの一種です。やってみると、部屋に塩を吹き飛ばす事が気にはなりますが、卵は解説通りにちゃんと立ちます。そしてコロンブスの卵の話もあり、卵は立たないもので、「塩無しでは、絶対に立たないのか?」という検証までは考えませんでした。
その後TVで見た生卵を立てる名人?の演技が眼から鱗でした。実際に卵は仕掛け無しに立つのか?と思って自分でやってみたら、卵の殻には小さな凸凹があり、名人でなくても立つ卵は簡単に立つのです。嬉しくなって、家族や友達に見せた事をよく覚えています。
ここでお話したいポイントは情報の大事さです。卵は立たないという先入観があれば、卵を立てようとはしません。しかし、「卵は立つ」という情報があれば、実際に試してみて卵を立てる事は難しい事ではありません。
私にとって、「コロンブスの卵」の逸話が面白いと感じたのは、その逸話によって、「卵は立たない」という先入観が与えられるという事です。その結果、卵を立てるという現象で人を驚かせる事も可能になります。
その後、高校時代に久しぶりに生卵を立てながら考えた事は、「卵が立つなら、他にも立てられないと思うもので、意外に立つ物があるのではないか?」という事でした。
身近な品で考えた結果、「1円玉なら軽いし、微妙に細かな傷もありそうで、縦に立てられるかも知れない」と思ってやってみたら、これがなんと立ちました(笑)。最初は下の1円玉が転がらないようにして立てましたが、写真のように、フラットなテーブルでも仕掛けなしでちゃんと立ちます。
今回、久しぶりにラビリンスのために一円玉を立ててみて、ひょっとしたら私のミリオンカードに向き合う姿勢の原点はここにあるかも・・とちょっとノスタルジーも感じています(笑)。そこで次回はミリオンカードでの先入観の利用について書いてみたいと思います。