古川令

照明について

 コーチのステージマジックの要素のシリーズで、今回は衣装と音楽に続いて照明について書いてみます。この順番については、重要な第一印象が衣装で決まり、照明は音楽と比べて自由度が少ないからではないかと理解しています。

 “カードが一番映えるのは黒”という考えからも、ホリゾントは基本的にお勧めしません。暗いホリでも、スポットがあたると色は抜けてしまいます。もちろん、テクニックに自信がなくて、雰囲気を出したいという人がごまかしに使う事に反対はしませんし、今後は、プロジェクターを使って背景の動画とミリオンカードとの組み合わせにチャレンジされる方も出てくる可能性はあると思いますので、演出としてのホリゾントを否定するつもりはありませんが、ここでは、スライハンドとしてのミリオンカードに限定したコメントです。


 写真はIBM(1997年ミネアポリス)でのファイナリストによるコンテスト本番の写真です。照明が悪い例として紹介しました。

 左手からカードを飛ばして帽子にキャッチしているシーンですが、残念ながらホリゾントが使われております。もしバックが黒なら、空中のカードが映える事は一目瞭然です。
 また、左手のカードはほとんど見えず、もしこの照明の状態でファンプロダクションを行なった場合には、観客には見づらい事もお判り頂けると思います。カードが映えるのが黒という観点から、舞台上部の照明は使わずにピン・スポットだけが演者が映えてべストという意見があり、それは一理あると思います。ただ、二つの理由から、私は舞台上部からの照明も使っています。

 ピン・スポットは指先を見せるには良いのですが、照明の範囲が狭くて演技が小さく見える欠点があると思います。折角広いステージなので、指先だけに注目させるマジックよりも、体や空間で表現できる部分がある方が望ましいというのが理由で、写真のようなカードスピン(ブーメランカード)なども取り入れております。カードを飛ばす事で演技が大きく見せられるだけでなく、私の手順では、その後の土星カードやスピン&ファンプロダクションの布石にもなっています。この場合、空中のカードはピンでは追えませんし、演じる側からすれば、ピン・スポットだけで後方からの照明が無いと空中のカードが見えないという問題もあります。

 以上、ここまでをまとめてみますと、私のコンテスト向けのステージでの演出は、大黒幕で舞台に全く何も無い状態で、音楽スタート、照明オン、そのまま音楽も照明も途中のチェンジはなく、演技の終了で照明、音楽がフェードアウト・・・と極めてシンプルです。従って、ステージでの事前のチェックは空中のカードが見えるかどうかだけです。

次回は、4番目の要素の「顔」について書いてみます。

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