土屋理義

マジックの切手
第34回

サーカスとマジック


 近代サーカスは、18世紀後半、イギリスの円形劇場で、曲馬(馬の曲乗り)と軽業で始めたショーが最初であるといわれています。一般的な演目としては、動物曲芸(馬、ライオン、象、熊、虎などの調教)、空中曲芸(綱渡り、トランポリン、空中ブランコ)、地上曲芸(人間ピラミッド、足芸、肩芸)と、道化芸(道化師(ピエロ、クラウン)のお笑い芸、手品、ジャグリングなどの軽業)で構成されています。
 日本では、明治19年(1886)に来日したイタリアのチャリネ曲馬団などがきっかけで、当初は「曲馬団」と称していました。その後、昭和8年(1933)に世界一の動物調教を誇ったドイツのハーゲンベック・サーカスが来日し大成功を収めてから、日本の曲馬団は、全国的にサーカスと名乗るようになりました。
 例えば柿岡曲馬団出身の萩原秀長(自転車曲乗り)や、その妹、君子が天勝一座に入り、その後独立して天華一座を旗揚げしています。海外でもサーカスのクラウンたちの多くがプロ・マジシャンになりました。
 サーカスでの手品は、道化師の笑いを取る演技の一つとして見せることが多いですが、ソ連時代のキオのように、サーカス内の大魔術団として公演されることもあります。サーカスとマジックは、切っても切れないものなのです。

サーカス(小型郵便切手帳-シールタイプ、ベルギー、2009年)

人体浮揚(拡大)

シルクハットから、鳩と
うさぎを取り出すマジシャン
(拡大)


上段左から、音楽バンド、ロープ上の二人乗り自転車曲乗り、人体浮揚、
人間ピラミッド、空中ブランコ

下段左から、玉乗り、二人によるアクロバット足芸、鳩とうさぎの取り出し、
馬の曲乗り、玉のジャグリング


ミッキーマウス誕生80年記念( MALAWI、2008年 )


ミッキーマウス:サーカスでの司会(K150)と、
ファンタジアでのマジシャン(K300)


サーカス (田型、東ドイツ、1978年)


田型左上・人間ピラミッド(5マルク)、右上・象の自転車こぎ(10マルク)
田型左下・馬の曲芸(20マルク)、右下・少女による白熊の調教(35マルク)


サーカス (ハンガリー、1965年)

3頭の馬の曲乗り(20f)

大太鼓・小太鼓・トランペットを
同時に演奏するピエロ(30f)


台湾の雑技 (台湾)

大どんぶり頭乗せの曲芸
(1.00)

肩掛けから金魚鉢などの
取り出し(8.00)


サーカスのシール (オーストリア、1シリング、発行年不明)


上段左から、一輪車曲乗り、空中ブランコ、道化師(クラウン)
下段左から、マジシャン(化学マジック)、踊子、口で棒上の玉・両手で玉のジャグリング・両足でリングを回す

“ARTISTEN”とは”ARTIST”、“HILFE”とは”HELP”の意味。サーカスの会場で、1枚1シリングで売られたのかもしれない。


魔術師キオ(ボリショイ・サーカス)(ソ連、1989年、拡大)





ボリショイ・サーカス(1961年日本公演のプログラム(表紙)



(同・裏表紙)ソ連大魔法団のキオの顔写真


キオのマジックの名場面



大ロープマジック、右側・空中での人体交換




箱の人体交換、右側・少女のガラス貫通、人体浮揚、がちょうの消失



箱の中から大量の鳩の出現

 プログラムの中で、キオは「私の魔法には本当は何の秘密もない。ただ考案と発明と一座全体の協力から成り立っている-いわばそんな“秘密”を私はお見せしたいわけです」と、謙遜して語っています。

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