TAMCで作った「奇術いろはカルタ」の中の秀逸は、「お」……「老いてますますたまる奇術材料(ガラクタ)」ではないか?コレクションは、集めている本人にとっては宝物であっても、ハタから見ると「ガラクタ」以外の何物でもない事が多い。
私は子供の頃、鉄道切符を集めた事があった。今のような自販機で売られているペラペラの切符に較べると、厚みもあって重量感溢れるものだった。1等車、2等車、3等車、特急券、寝台券……等々全て色が違う。加えて今ほど旅が手軽ではなかった時代であり、まして子供である。当時の鉄道切符には、「希少価値」と「旅の思い出やユメ」を選んでくれる何かがあった。そんな処に起因してか、小学生の頃から、得意の科目は地理だった。
後年、「マジック」と「旅行」が趣味になるにつれて、コレクションも様々な因果関係を保ちながら色々と変化し、今では次の3つのものを集めている。
カードのコレクションは、単に数だけを競うなら、専門店に行けば幾らでも手に入る。しかし「コレクション」と言うからには、集める為の手間や苦労に価値がある。
私がカードを集めるのは、主に海外旅行の時であるが、国内でも、観光スポットや各種イベント等に行った時は、そこにオリジナルカードがないかどうか、必ず目を光らせている。海外ではリゾート地、観光スポット、美術館、博物館、劇場、ホテル、有名ブティック等には必ずと言って良いほどオリジナルカードが置かれている。カジノにカードはつき物だが「イカサマ防止」のため、一旦、封を切ったカードは二度と使えないよう、孔をあけたり、角を切り落としたりして、場外で1個100円ぐらいで売っている。丁度、ゴルフ場でロストボールを売っているようなものであるが、そうしたカードを手にしていると、「これがギャンブラーが操っていたカードか…」などの想いが湧き、ラスベガスでの夢が甦る。
1994年、スコットランドに旅行した時、土屋理義さんの紹介で、世界一のトランプ屋「サマビルオブ エジンバラ」を訪ねた。民族衣装のスカートを身に着けたサマビル社長(国際カード協議会長)は快く出迎えてくれた。あとで教えてみたら、この時の旅行だけでカード92個、シンブル45個を買い求めてしまった。それほど魅力溢れる旅だった。
このようにして、これまでに、私が集めたカードは約1300個、シンブル300個を超えた。これだけの数になると、収納に中々苦労する。ただ、しまっておくだけでは能がない。
コレクショングッズを価値付けるのが「整理方法」である。その方法も、人により多種多様であるが、私は「一覧性」という視力に添えて、その魅力を引き出したいと考えた。
「シンブルの場合は、筒型ガラス製で円形同転盤5段の専用陳列ケースがあるので、それを幾つか買い求め、我が家の玄関に陳列してある。
「カード」は、マップケースと言う地図や図面を折らずに収納する縦67cm×横90cm×高さ4.5cmの引き出し10段の仕器を買い求め、各引き出しに木製の桟を取り付け、見易くするために、各カードに傾斜を持たせて収納している。こんな工作も楽しいことである。
「永らく小売業に携わった人の発送ですね」と友人から冷やかされた。
収納は次の分類に基づいている。
そして、「自分で買い求めたもの」「人から頂いたもの」など、全て入手経路と年月を小型ラベルに記入して、カードの側面に添付している。このようにして集めたカードを眺めていると、買った時の状況、頂いた時の経緯などが、1つ1つ甦ってくる。
私がカードを集めている事を知っている人から「おみやげに…」とか「ちょっと目に付いたので…」と頂き、カードを通じて新しい人間関係が深まることも多い。
しかしながら、考えると、やはり冒頭に申し上げたように「これもガラクタなのだろうか?」と不安に駆られることも確かである。私が死ねば所詮「何も評価されないまま、捨てられてしまうのではないか…」と思っていた矢先、私より40歳も若いマジック仲間から「坂本さん!坂本さんが死んだら、このカードすべて私が引き受けますよ…!」と言ってきた。それを聞いた私の家内が「カードとシンブルだけは人に渡さないわよ!ほかのモノ(ガラクタ?)は別として…」と叫んだ。そこで私は、安心して引き続きカードを集め続ける事を決心した。
※TAMC誌に掲載した原稿をご紹介頂きました。