氣賀康夫

みにくいアヒルの子

<解説> このパズルの製作にはアメリカのパズル研究家でもあり、奇術研究家でもあるマーチン・ガードナーの本に紹介されていた「兎と卵」というパズルがヒントになっています。
このパズルは図形消滅(出現)パズルの一種なのですが、図形を工夫して、単に数が増えるのでなく、並べ替えによって卵の絵が兎の絵に変わるようにデザインされているところがユニークです。このような工夫は他にも例がありますが、卵はなかなかいいと思いました。ところがよく考えてみると、兎は哺乳動物であり、卵を産む動物ではありません。そこで、筆者がこの組合わせは不自然であり、兎は鶏に変えるべきであると思いました。そこで、鶏と卵というデザインを工夫しいろいろ作図してみたのですが、いい作品に仕あがりません。ところがあるとき、鶏をアヒルに替えてみたところ、満足する作品が仕あがりました。そこで、ここでは、そのアヒルと卵の組み合わせをご紹介いたします。

<用具> 1枚の図柄を3枚に切り離したものです。(写真1)
小さい切片の裏面に電熱器の絵を画き、中サイズの切片の裏面に白鳥を描いておきます。

写真1
写真1

<演出>
1. まず、パズルを並べて、絵を見てもらいます。このときは、一番小さい切片を左下に配置します。そして次のように話かけます。「これはアヒルを飼育しているある人の所有する草原の絵です。さて、アヒルは何羽いるでしょうか。数えてみてください。」観客が数えるとアヒルの数は9羽です。(写真2)ただし、真ん中あたりに卵が1個画かれていることがわかるでしょう。

写真2
写真2

2. 「そう、アヒルは9羽いますが、ここに卵がありますから、それが無事孵れば合計が丁度10羽になりますね。では、どうやったら、この卵を孵化させられるでしょうか。」と言います。そして、小さな切片の裏に画かれた電熱器を見せます。(写真3)「では、卵を温めて孵化させることにいたしましょう。」と言い、電熱器の絵に手をかざします。

写真3
写真3

3. 次に切片をすべて表向きにして、再び整えますが、このときは一番小さい切片を左上に配置します。すると卵が見えなくなりアヒルが10羽画かれていることがわかります。(写真4)

写真4
写真4

4. この絵を見せながら、「ところで、卵が孵ったようですが、アヒルの中に混ざってしまいました。どれが新しいアヒルの子でしょうか。」と言い、上から3羽目のアヒルの絵を指差して「どうでしょうか。多分、これだと思います。このアヒル少し見にくくありませんか。そうです。これは醜いアヒルの子と呼ばれています。今はこんな姿なのですが、少しすると、この子は美しい白鳥に成長すると言われています。それでは最後にその成長した姿をご覧に入れましょう。」と話を締めくくり、中サイズの切片の裏に画かれた白鳥を示します。(写真5)

写真5
写真5

<後記> このデザインの完成で、卵は鳥類の卵であるという条件は満たしたのですが、アヒルを画いたおかげで、最後に「みにくいアヒルの子」というオチが得られることになりました。このギャグがなかなか受けます。

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