<解説>
この奇術は筆者の恩師の一人である石田天海師のお気に入りの作品です。
原案は古く、ロバート・パリッシュの著書「天海の六つの奇術」で初めて紹介されました。
その時点では使われている主な技法はグライドでした。その後1958年に天海師が日本に帰国されることとなり、風呂田政利氏が主管する天海IGPという会で、よく指導してくださったのがこのプロットの方法論を一新した新手順だったのでした。
そのときの基本技法はプッシュオフカウントに変更されていました。この手順はその後、風呂田氏、厚川氏などによって奇術界に伝えられましたが、その内容に微妙な差がある結果となりました。ときどき指摘されるように天海師は一旦完成した手順でも、その後の研究で内容を変えることがよくあるタイプの奇術家ですが、この飛行カードは1958年から天海師がご他界なさるまであまり基本を変更しない得意の芸であったと筆者は記憶しております。
したがって、風呂田氏と厚川氏の違いは習った時期の差によりものではなく、ご本人の解釈の違いであると考えられます。
そこで、このマジックラビリンスでは天海師の方法をできるだけ原案どおりに演ずるようにしました。
筆者が意図をもって変更したのは天海師が左利きだったので、それを一般的な右利きの演者のための動作に修正しているところです。
その他、どうしても自然に見えない演技開始前の準備をやや工夫しました。
その他の点では風呂田氏、厚川氏が省略してしまった細かいディテールについても天海師の作戦を忠実に厳守するように配慮いたしました。
天海研究の方には参考になると思います。