<解説>
このマジックの原理は、古典的な小品奇術として知られています。
カードを5枚ならべてその中央の位置を確かめると、その位置が裏と表では違う位置になるという
当然の原理を巧妙に奇術に活用して見事な効果を作っています。
今回提案の新しい案の種では、最後に、それと気づかれないように種を処分する巧妙な手法を導入していいます。
これはいままでにない全く新しい工夫であります。
その種を活用してこの小品奇術を演ずる手順を以下に解説しておきます。
<効果>
5枚のカードが並べて貼り合わせてあります。
そしてその真ん中の一枚は裏も赤模様、
表も赤のカードですが他の4枚は裏が青模様、表は黒のカードです。
洗濯バサミを用い、それを5枚のカードの適当な位置につけます。
裏返すとなるほどその位置にクリップがついていることがわかります。
ところが洗濯バサミをよく検め、観客が赤いカードにそれをつけようとすると、
なぜかクリップはとんでもないところについてしまいます。
<用具>
- バイシクルのポーカーサイズのカードで種を作るとします。
用いるのは裏青のカードで例えばクラブの6、スペードの7、クラブの9、スペードの10の四枚を用いることにします。
さらに裏赤のカードでハートの8を用います。
この5枚を表向きで左から、6,7,8,9、10の順に並べます。
並べるときカードの間隔が丁度2.1cmになるように調整することが大切です。
ポーカーサイズのカードは幅が6.3㎝であり、この5枚を貼り合わせたものは幅が2.1×4+6.3㎝=14.7cmとなります。
貼り合わせはボンドを用いるのが簡単です。
<写真1>
なお、このカードは現物で十分と考えますが、カードが無駄になって困る場合には、<写真1>の裏と表をカラーコピーに撮り、適当な厚紙を台紙にして、その両面にスプレー糊で貼りつければ、この奇術専用のカードを作ることも可能です。
どちらがいいかは読者の判断にお任せします。
- 次に巧妙な秘密の種を作ります。
そのためには上記の貼り合わせたカードの裏面をカラーコピーして、それをハガキくらいの厚さの台紙に貼りつけます。
このときアラビア糊、大和糊などを用いると、紙が伸縮してできあがった種に反りが入ってしまうので、張り合わせにはスプレー糊を使います。
こうしてできたカラーコピーを台紙に貼りつけたものをカッターか鋏で丁寧に切り取ります。
この段階ではまだ裏面は白紙です。
そこで次に新聞紙の適当な個所を同じサイズに切り取って、この種の裏にスプレー糊で丁寧に貼りつけます。
切り取る新聞の欄はできるだけ平凡なコラムなどの個所が適当です。広告やカラー写真のあるような目立つ個所は避ける方が無難でしょう。
<写真2>
こうしてできあがった種の仕上がりをテストします。
まず、5枚のカードを種にぴったり重ねてみます、向きは裏向きです。
正しく作成すればサイズがぴったり合うはずですが、仮にずれが見つかったら鋏でトリミングして微調整を行うことが望ましいです。
次に新聞の適当なページを開き、そこに出来上がった種の新聞紙面を上にしてそっとそれを新聞紙の上の置いてみます。
その置く位置と向きが適切であれば、新聞の上に新聞のデザインが重ねられるので
一見それはそこに置かれていることが分からないようになります。
動物学でいうと擬態というわけです。
<準備>
- 五枚のカードの裏面の上に種をピッタリ重ねます。
このとき本物の裏面と種の裏面とが左右逆になっているのが正しいセットです。
なお、この奇術の実演に際しては、演者が注意深くカードと種を扱えば、そのための特段の用具は要らないのですが、安全のためには目玉クリップを使って、カードの手前側を止めていくのも賢明な方法です。
<写真3>このときカードと種の向う側(観客に近い位置)のエンドが良く揃っていて表も裏も怪しく見えないことを確認することが大切です。
<写真3>
- もう一つ大切な道具が用いられます。
それは洗濯バサミです。
- 最後に大切な道具でですが、それは新聞紙です。最低限、1ページ分で十分です。
それを左右上下に1/4に畳み、その間にカードと種(目玉クリップで留めたもの)と洗濯バサミを用意しておくのが便利でしょう。
<方法>
- 演技に先立ち、新聞紙を広げて、カードと種を目玉クリップで留めたものを取り出します。
そして目印に使う洗濯バサミをそのあたりに置ます。
新聞紙はあとで種を置くために何気なくテーブルに残しておきます。
ここで次のような話をします。
「ご存知のようにサッカーではレッドカードというのは反則の判定のためのカードを意味しますが、
トランプマジックのレッドカードにはそういう悪い意味は全くありません。
今日は、トランプのレッドカードのお話をします。」
- 目玉クリップでカードと種が重なって留めてあるままでカードの裏表をよく見せます。
実は、裏の位置が本当の裏の位置と左右逆になっているのですが、観客はそのことに気づかないでしょう。
ここで表を見せたとき、「ご覧のようにここに5枚のカードが留めてありますが、
その5枚の真ん中のカードだけが赤のカードであり、他の4枚は黒のカードです。」と説明して、
裏を見せたときには「裏をご覧になっても真ん中のカードだけが裏模様が赤であり、他の四枚は裏模様が青です。
したがって、裏表どちらから見てもレッドカードは明白です。」と説明します。観客はこの話に納得します。
- カードの裏を上に向けて、洗濯バサミをいろいろない位置につけてみては、それを表返し、裏と表と位置が合うことを確かめます。
実はこの検めは嘘の検めなのですが、観客にとってはその間違った認識がここで先入観となって頭に焼きつきます。
この検めで、洗濯バサミをつけるべき位置は<写真4>に示す4か所がいいと考えます。
この場合、種のおかげで、裏と表は同じ位置に洗濯バサミがついている状態に見えます。
ただし、上記のように、これが実は錯覚なのです。
<写真4>
- ここまで、予備動作が終わったら、静かに目玉クリップを取ってテーブルに置き、
さらに洗濯バサミも取って観客に手渡して「ではこのクリップと洗濯バサミが怪しくないかどうか調べてください。」と言います。
- 観客が目玉クリップと洗濯バサミを調べている間に、
術者は手にしていたカードと種を重ねたまま何げなく新聞紙の上に静かに置きます。<写真5>
そして、種を新聞紙の上の残したまま、上のカードだけをそっと持ちあげます。
そして、調べ終った目玉クリップを受け取って、再びもとのようにカードの手前にくっつけて、洗濯バサミを右手に持ちます。<写真6>
- ここで洗濯バサミをいろいろな位置にくっつけては裏表をあらためる動作を行いますが、その位置は<写真7>に示す位置の3か所から選びます。
<写真7>
- ここまで来たら、カードを公明正大に表向きにします。
そして赤のカードの位置を覚えていてください。」と言い、カードを裏向きにします。
ただし、このときのカード180度の回転は<写真8>の矢印の位置を中心に回転させることが大切です。
- 観客はためらわず、裏が赤のカードに洗濯バサミをつけるがそのままカードを表向きにすると
とんでもない位置に洗濯バサミがついています。<写真9>
- いよいよエンディングです。
洗濯バサミを右手ではずしてそれを観客に手渡し、「表をご覧になってどれが裏が赤のカードかはわかりますよね。」と言います。
そう言いながらカードを裏返すのであるが、そのときの回転軸は<写真10>の矢印の位置でなければなりません。
そして、再びカードを回転させてもとの向きに戻します。
<写真10>
- 観客がここぞと思い、ハートの8のところに洗濯場バサミをつけます。
そこで「では確かめましょう。」と言い、カードをゆっくりと公明正大に裏返すと、
洗濯バサミは再び、とんでもないところについていることになります。<写真11>
<写真11>
※補足
「写真で使っている目玉クリップは金具の巾が4~5cm程度ですが、最近幅が11cmくらいもある広いクリップを文房具店でみつけました。
目玉クリップの代わりにこれを使うことをお勧めします。その場合、最後に観客が洗濯バサミを間違った個所につけたことがわかったところで演技の終了としないで、もう一度トライさせることにします。
ただし、その場合、洗濯バサミを返してもらい、代わりにこの幅が大きいクリップを手渡して、それをカードの向う端につけてもらいます。この奇術の5枚のカードの幅は15cm足らずですから、このクリップをつけるとほぼカード幅全体を挟むことになります。したがって、裏を返しても赤のカードはその幅の中におさまります。そこで「今度は正しく挟むことができましたね。」と観客を褒めあげて、なにか気の利いた敢闘賞をプレゼントするといいエンディングの演出になります。」
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Photo: study by CodyR