氣賀康夫

テロリストを捕まえろ!
(Capture the Terrorist)

    神のマジック

    東京マジックから「楽しい図形パズル」の連載が終わりに近くなったので、続く第三の新シリーズを企画して欲しいとのご要望に接しました。今までは、「何か面白いもパズルを!」というキカッケから、もっぱらオリジナルパズルをご紹介してきましたが、今度は奇術そのものを取り上げる企画を考えました。奇術にはいろいろな分野がありますが、今回は「かみのマジック」シリーズで行きたいとご提案しました。ちょっとした聞き間違い(?)があり、題名は「神のマジック」となりました。素敵な題名です。
    もともとの趣旨は、紙に手書きやコピーなどでデザインをすれば、誰でもさほどの技術がなくてもできるという手軽な奇術を選んでご紹介する企画で「紙のマジック」と題する予定でした。取り上げるマジックの原理は、古典であったり、知られている種であったりするものも多いのですが、演じ方をよく考えて筆者独自の工夫を加えてありますので、多くの奇術研究家にお楽しみいただけるシリーズになると確信しております。ご期待ください。



    <解説>
    この種は数年前のTAMC大会のお土産にも採用されたものですが、そもそもは30年ほど前に入手したマーティン・ルイスのレコードに演出された原理を応用した デザインです。筆者がすべての絵柄を画きなおし、彩色したもので、ルイスの原案に ない改良点もあります。ルイスのレコードでは、観客は一人、演者はレコードの声です。これと同じ演出をする場合には指図を録音する必要があります。 注意しなければならないのは、観客が一人で、術者が観客の手元を見ながら指示を与えたのでは不思議でもなんでもなくなり、奇術にならなくなってしまうという点です。 それよりも、観客の数が多い場合の方が面白い演出ができます。観客が7人から20人くらいが適当ですが、舞台で500人の観客を一度に楽しませるようなことも可能です。人数分用紙を用意して配ればいいのです。TAMCの大会では観客は700人くらいでしたが、司会の山崎さんに指示内容を読んでいただくように演出して700人にそれを楽しんでいただくことができ大成功でした。

    <効果>
    沢山の都市が画かれた用紙を沢山の観客にくばり、観客は国際刑事に見立てた コインを任意の都市の上に置きます。そこから、六個の指令が出され、指令にしたがって 観客全員がコインを動かします。一見、全員が別々のことをしているように思えますが、 最後は、全員のコインが同じ都市(香港)に集まってしまいます。術者はそこで、 香港のポスターを示します。

    <用具>
  1. 必要なのは4×4=16の升目に世界の都市16をデザインしたものです。
  2. 枠サイズ:約17cm×18cm
    (クリックで印刷用に表示)

  3. 演技に用いる指示の台詞は印刷しておいて、第三者に一項目づつ読んでもらう方がいいと思います。その印刷内容は以下のとおりです。

    1. 指令1. 
      「まず、紙に画かれた16の都市にご注目ください。そのどこかに、テロリストの 潜伏している住み家があります。これから皆さんが国際刑事になったつもりで それを追いかけてみることにいたします。では、コインを16の都市の好きなところに 置いてください。」

      指令2.
      「では、本部から第一の指令を出します。まず、周囲の都市を見回し、 黄色の都市があれば、そこに移動して下さい。」

      指令3.
      「次の本部指令です。テロリストは青の都市に居るらしいので、いま居る都市から右、左を見回して、一番近くの青色の都市に飛んでください。」

      指令4.
      「次の指令が来ました。黄色の都市を念のため調べたいので、いま居る都市から上、下を見回して、一番近くの黄色の都市に飛んでください。」

      指令5.
      「やはり、青い都市があやしいそうです。次の指令です。いま居る都市から斜めの方向見て、近くに青の都市があったらそこに移動してください。」

      指令6.
      「最後の指令です。テロリストの住み家がわかったらしいです。いま居る都市の右か下に黄色の都市があれば急いで移動してください。そういう位置に黄色の都市がない場合は、いま居る都市に留まっていて下さい。」

    <方法>

  1. 観客の一人一人に用紙を,.配り、十円玉でも五円玉でもよい、適当なコインを取り出してもらい、それを国際刑事に見立てることにします。
  2. 指示を書いた紙を誰か第三者に手渡して、指示を一項目づつ読み上げてもらうようにします。司会者がいれば、その人にお願いするのがいいでしょう。
  3. 第六番目の最後の指示が済んだら、全員の居る都市を確認するのですが、不思議なことに全員が香港に居る結果になります。
  4. 演出としては、大舞台の場合には、大きな香港旅行案内ポスターを示すのが効果的クライマックスです。また、小パーティの場合には香港旅行パンフレットを全員に配るのもいい案だと思います。
  5. 参考:株式会社ジャルパック:
    パンフレット2014.4.01~8.31 より

                             第2回