平川一彦

パンドワー
第22回
トリプル・リピート・リバース

現象

 ピークしたカードが3回リバースします。しかも現象中は表面と裏面がある1枚のカードだけを使用しているということがはっきりと分かります。

準備

レギュラーカードのクラブの6(C6)の裏面にHFCのC6を貼り付けたハーフバック付きダブルフェイスカード(HBDFCですが以下HFCと記します)を使用します<写真1>

写真1

デックからレギュラーのC6を取り除きます。HFCのレギュラー面のC6をフェイスアップにして、その上にデックをフェイスダウンで重ねます<写真2>。即ちデックのフェイス面はハーフのC6があり、デックをフェイスダウンで持ったときにそのハーフのC6が右側にくるようにセットします。

写真2

手順

  1. ボトムカードの位置を変えない好きなフォールスシャフルをします。コンプリートカットで2組の間に左手の小指のブレイクを作ります。HFCはブレイクの上にあります。
    パフォーマーは良く知られているフォースを次のように行います。即ち、デックを左手にフェイスダウンのディーリングポジションに持ちます。そして客に、左手の親指でデックの左上コーナー近くをリフルダウンしている最中にストップを掛けるように言います。
    ストップが掛かったら<写真3>のように左手の親指からカードを放して出来るスペースあるいは隙間を客にはっきり分かるように見せます。
  2. 写真3

    <写真4>は上記の<写真3>を客側から見たところです。
    写真4
  3. そして右手は見たところ、そのスペースから上のカードを持ち上げたかのように見せますが実際は次のように行います。右手の指がデックのアウターエンドをカバーしたその瞬間に右手はスペースを閉じて、インナーエンドに付いている右手の親指で、左手の小指が保持していたブレイクから上のカードを持ち上げてHFCを含むトップパケットを首尾よく取り去ります。
    そして右手はそのパケットの幅の右半分を左手のパケットの右サイドにジョッグして重ねます<写真5>
  4. 写真5
  5. 次に左手の指と親指は少し後ろ(左)へ戻して段差の付いた両パケットをしっかり握り締めます。そして左手を上げてデックのフェイスを客に向けて、客が確かにストップを掛けたカード(?)を覚えてもらいます<写真6>。実際は、客が見ているのはHFCのC6です。
  6. 写真6
  7. 客がC6を覚えたら普通にデックを揃えて左手にフェイスダウンで持ちます。C6は右側にきています。さて、ここからのデックのハンドリングは、客はC6の裏と表を見ているのだと客自身を納得させるものです。先ず、右手はデックをフェイスアップにする時のように内側(パフォーマー側)にターンして「私がデックをこのようにひっくり返すと、あなたのカードだけを除いて、全て表向きになります」と言います。

    そしてHFCの半分の裏面(ハーフバック)が出てくるまでデックを両手間に広げていきます。ハーフバックが左手のパケットに出てきたら、左手の親指はさらに数枚のカードを広げて確かに1枚の裏向きのカードがあるのを示します<写真7>
  8. 写真7
  9. そして「もちろん、あなたはこれがあなたのカードかどうか分かりませんので、お見せしましょう。」と言って、右手はスプレッドを左手に閉じて、横へフェイスダウンに返しながら「あなたの覚えたカードは何でしたか?」と客にカードの名前を聞きます。
    客が答えたら、レギュラーのC6が出てくるまでデックを両手間に広げてゆき、C6が現れたら右手はそこから上(右側)のカード全てを<写真8>のように少し右側へ動かしてC6を広く見せて「確かにあなたのカードでしょう?」と言います。
  10. 写真8
  11. そしてその表向きのC6が左手のスプレッドのトップになるようにそこでカードを分けます<写真9>
  12. 写真9
  13. 今、両手はそれぞれ少し広げたカードを持っています。次に左手の親指は表向きのC6の約半分を右側へ押し出します。そして両手を上に返して<写真10>のように少しだけ広げたカードの表面を示します。ここで「同じカードは1枚も使っていません。C6は1枚だけです」と言います。
  14. 写真10
  15. そこには見たところ、C6のバックが見えていますが実際はHFCのバックです。この<写真10>の短めに広げたカードの表面を見せるのは、C6のバックを示すと同時にもう1枚の同じカードを使っていないことを示す巧妙な方法です。
    両手を元に返してデックのバックを上に向けます。「もう一度やって見ましょう」と言って、フェイスアップのC6を右手のカードの下に取ります。そうして当座はC6をそこに保持します<写真11>
  16. 写真11
  17. 「今度はこのカードをデックの中に入れてしまいます」と言って、左手に残っているカードを左手だけでフェイスアップに返して持ちます<写真12>
  18. 写真12
  19. そして右手のC6を左手のパケットのフェイスにおき、続けて右手は持っているパケットをフェイスアップに返しながら、左手のパケットのフェイスに重ねてC6をデックの中央に入れてしまいます<写真13>。そうすると、見たところ全てのカードが同じ向きになったように見えます。
  20. 写真13
  21. 次に右手は左手のデックを横に返してフェイスダウンにします。そして「全てのカードはフェイスダウンです」と言って<写真14>のようにデックを両手間に広げて全てのカードがフェイスダウンであるのを示します。これはHFCのC6が右側にきているので、全てフェイスダウンに見せることが出来ます。
  22. 写真14
  23. デックをオールアラウンドスクエヤーで両エンドを逆にします。HFCのC6のバックは左側にきます。再びデックを両手間に広げてフェイスアップのC6を示し、「やはりあなたのカードは表向きになりますね」と言います。次にデックを分けますが、この時に注意することはデックを分けた時にHFCが<写真11>のように右手に少し広げて持っているカードの最後(ボトム)のカードとして残っているということです。
  24. 今、HFCのC6は<写真11>と同じ右手の位置にあります。左手は持っているパケットを左手だけでフェイスアップに返して、右手のHFCのC6を左手のフェイスアップのパケットの下に取り(この時ハーフバックが見えないように注意します。)、右手は残っているカードをフェイスアップに返して左手のパケットのフェイスに重ねます。そしてコンプリートカットをしてHFCを中央に持ってゆき、フェイスアップデックを左手に保持します。
  25. 上記のアクションは疑念を引き起こすかもしれません。とはいうものの、何かしたいのならば、次のような台詞を言っても良いでしょう。「いや、あなたのカードはまだ何も起きていません。見ますか?」と言って、フェイスアップのデックを両手間に広げてHFCのC6を示してからデックを閉じて揃えます。

    「しかしデックをこのようにひっくり返してもあなたのカードは表向きのままです」と言いながら、デックを縦に(パフォーマーの方に)フェイスダウンに返し、そしてデックを両手間に広げて現れたC6を<写真8>のように幅広く示します。

    両手はカードをそこで分けて持ち、左手の親指でC6の約半分を右側へ押し出して<写真10>のように両手を上に返して、少し広げたカードの表面を示しながら「もちろん同じカードは使っていません」と言います。 両手を元に返して、フェイスアップのC6を右手のカードの下に取り、左手に残っているカードをフェイスアップに返します。ちょうど<写真12>と同じ形になります。

    そしてHFCのC6を今度は左手のフェイスアップカードの下に戻して(この時ハーフバックが見えないように注意します)、右手は残っているカードをフェイスアップに返しながら左手のカードのフェイスにおきます。フェイスアップのデックを揃えながらボトムにあるHFCを左手にパームしてコートの左横ポケットに入れてしまいます。

    『M.I.N.T. vol.Ⅰ』by Edward Marlo、P.225~227


(訳者追記)
最後の、左手にパームしたHFCを客に分からないようにコートのポケットに入れるには、それなりの動作が必要です。研究してみてください。

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