フレキシブル・ミラクル・スプレッド 2
第15回で解説した“フレキシブル・ミラクル・スプレッド”では、スプレッドの中に差し込んだフェイスアップカードが、スプレッドと一直線に並んでいました。
そのカードをパフォーマーから見て、アウトジョッグした場合、または、カード以外の、例えば、コインなどをスプレッドの上に置いた場合は、また違った面白さが出てきます。
以前に私は、マーローは、彼が作り出したトリックを後になって、改良をして、それからまた、その再改良をしていると言いました。
彼の本“Thirty Five Years Later”の中の“The Eidetic Slide”(すでに解説済)に始まり、その改良作品が同じ本の3ページ後に載せてあり、その21ページ後に再改良の、前回に解説した“Flexible Miracle Spread”が載っています。
さらに、その20ページ後に、再々改良した作品が、“最後の覚え書き”として載っています。
しかし、これら一連のトリックは、1960年に出版された彼の本“IBIDEM #20”の中にある“The Miracle Spread”に由来します。
彼は、よく次から次へと、改良作品や、それから発展させた新作を考え出します。このような書き方をする、このようなマジシャンは、マーロー以外に私は知りません。
では、その再改良作品である“最後の覚え書き”をどうぞ。タイトルは、私が勝手に“フレキシブル・ミラクル・スプレッド2”と付けました。
- このトリックは、前回の1~5段階までと全く同じです。
- リボンスプレッドに差し込まれたフェイスアップカードが、アウトジョッグだとします<写真1>。
写真1
- もちろん、左手はスプレッドの左端を握っています。
次に右手は、前回と同じように、アウトジョッグカードより右側のカード全てを右横へ押しやります。
- そしてその右手の親指をフェイスアップカードの上に付けますが、その時に右手の指が左方向を指し示すように付けます<写真2>。
写真2
- 左手は、カードを、スプレッドの下の相手カードと共に、右方向へ<写真3>の位置まで集めていきます。すると、相手カードの約右半分が、右手で押さえているフェイスアップカードの下に入ります。
写真3
- この状態で、左手の甲は、パフォーマーの左側から、右手の甲は、右側から、そして、左方向を指している右手の指のバックは正面から、それぞれ、この動作を相手から見えないようにカバーしています。
つまり、全てのサイドから見えないようにカバーしているので、この交換を焦らずに落ち着いてできます。
- 次に左手は、右手の親指で押さえているフェイスアップカードの下に相手カードを残して、残り全てのカードを左方向へ持ち去り、そのまま左手に握っておきます。
- すると、<写真4>の状態になり、まるで、フェイスアップカードを差し込んだ次のカードを押さえているかのように錯覚します。実は、このカードは、スプレッドの下にあった相手のカードです。
写真4
- 右手は、その2枚のカードのアウターエンドを掴んで、相手の方へ出して、フェイスダウンカードをフェイスアップにターンするように言います。
- 相手がカードをターンしている間に、右手は、すぐに、右方向へ動かしたカードを集めて、左手に持っているパケットの上にフェイスダウンで置き、両手でそろえながら、両手を体の正面のテーブルエッジ近くに置きます。
そして、相手を見てニコッと笑います。
- 次に、右手でテーブルの2枚のカードを取り、それを左手のデックのトップへフェイスダウンに置いて、1~2度、リフルして、次の好きなトリックへ移ります。
マーローは、3段階のところで、アウトジョッグカードより右側のカード全てを右方向へ動かさない方法も行っています。
スプレッドの上に置くのは、カード以外に、第15回の“フレキシブル・ミラクル・スプレッド”で触れたようにペン、ナイフ、コイン、ミニ・カーなど、いろいろ“応用”ができます。これぞまさしく“フレキシブル”です。
"Thirty Five Years Later" p.61.
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Photo: study by CodyR