<マーローのカードマジック:3>
私がこの世に誕生する3年前の1942年に発行されたエド・マーローの“デック・ディセプション”は、カードトリックがすぐ出来るマーローの初期の作品集です。マーローは、この頃、すでに、ル・ポール、ダイ・バーノン、ジャコブ・ダレイ、ホロウィッツ、ポール・ロッシィニィ、ジミー・トンプソン、ジョン・スカーン、そして、バート・アラートンなどのトリックを研究していたようです。
“ディセプション”とは英和辞典を引くと、“だますこと、だまされること、ごまかし、詐欺、ぺてん、だますもの”とありますので、“デック・ディセプション”とは、“カード・トリック”という事でしょう。
その“デック・ディセプション”から紹介させて頂きます。
まず最初は、“カサノバ・カード・トリック”といって、マーチン・ガードナーのトリックを応用しています。実際の内容はクィーンで解説されていますが、ここでは、4Aで説明してみます。しかし、原文は、テクニックが詳しく解説されていないので、私なりのテクニックを少し加えてあります。
- デックのボトムからトップへ次のようにセットします。
2枚の普通のカードを背中合わせにして、その上(トップ)に2枚の黒Aを表合わせにします。そして、その上に2枚の普通のカードを背中合わせにして、最後に赤Aの2枚を表合わせにしてセットします≪写真1≫。
写真1
- デックを左手にフェイスダウンのメカニック・グリップで持ちます。セットしたカードはボトムに位置しています。
右手でデックをフェイスアップにターンします。
- 次に右手でデックを上から握りますが、右手親指はインナーエンドに、そして、他の4本指はアウターエンドに付けます。それから、デックをほんの少し左手のひらから持ち上げて、すぐに右手人さし指で、フェイスデックの上約半分を右手親指を軸として左側へカットします≪写真2≫。そのときにフェイスカードの下のバックが見えないように注意します。
このカットを、“スイング・カット”または、“キック・カット”と言います。マーローの“ランニング・カット”は、これと良く似ていますが、これに他のテクニックが加わります。
写真2
- その左側へ斜めに突き出たパケットの左サイドの左上コーナー近くを左手親指の叉に挟んで、そのままの状態でデックを左手の平に下します≪写真3≫。
写真3
- 右手はデックを握ったまま、インナーエンドの右手親指とアウターエンドの右手中指の指先を軸として、右手をデックのバックへ右回転します。
すると、右手の平は少し上を向き、下パケットのアウターエンドに右手中指と薬指が付き、インナーエンドに右手親指が付いた状態で握っています。右手小指はフリーです。右手人さし指は、下パケットの右サイドの右上コーナー近くにあります。
- 次に右手は、その下パケットを右側へ取り去ります。すると、上パケットは、自然と左手の平に落ちます。すぐに、左手中指、薬指、小指でそのパケットの右サイドを握ります。その理由は、左手パケットのフェイスカードの下のカードのバックが見える恐れがあるからです。
右手パケットは、右手親指と人さし指、中指、薬指で保持されており、小指は、フリーです。しかも、そのパケットは、右手の平から上に約5,6cm浮いています。つまり、右手の親指、人さし指、中指、薬指のそれぞれ指先で保持している状態になっています≪写真4≫。
写真4
- 次に右手人さし指をそのパケットのバックに曲げます。
左手も、まず、アウターエンドの人さし指をそのパケットのバックに曲げて、その爪の甲をバックに付けます≪写真5≫。
写真5
曲げた人さし指を伸ばして、そのパケットを上方に押し上げます。結果として、パケットを、左サイドの親指と右サイドの中指、薬指、小指のそれぞれ指先で保持しています。
しかし、左手人さし指の爪は、まだバックについていて、リフル・カウントの準備をします≪写真6≫。
写真6
- その両手の位置のまま、パケットのフェイスをお互いに合わせます。同時に、左手親指から3枚のカードをリフルして右手パケットのフェイスに放します≪写真7≫。このリフルが少し練習を必要としますが、なれると、3枚のカードを1度の動作(リフル)で放すことが出来ます。
写真7
その3枚を右手の親指と中指、薬指、小指の先で握ります。この動作は、パケットを見ながら行います。すると、3枚のカードがさっと通過するのが分かります。
- 両手を左右に広げて、それぞれのパケットのフェイスのAを見せます≪写真8≫。次に、左手親指を右手パケットのAの上に当て、滑らせるようにして、テーブルへおきます。そして、左手親指は、左手パケットのAをテーブルに置いた最初のAの横に配ります≪写真9≫。この時も、左手パケットのフェイスカードの下のバックが見えないように注意します。
写真8
写真9
- カードは、まだ同じ位置関係になっているので、あと2枚のAを見せるために、その動作を繰り返します≪写真10≫・≪写真11≫。
写真10
写真11
これでトリックを終わりますが、このトリックの欠点は、デックの中に2枚のリバースカードが残ることです。マーローは、この2枚を、シャッフルする間にラッピングで処理している事もあります。
マーローは、相手から借りたデックでこのトリックを演じるための、次のようなケースを解説しています。
- 1枚のカードを選ばせて、覚えてもらい、それをデックの中に返してもらうときにグリンプスをするか、または、その位置を知るキーカードの方法を使っています。そして、一見、相手カードを探すふりをしながら、4Aをボトムにセットします。
その間に相手カードを見つけ出して、そのカードをトップから12,3枚目位に入れてしまいます。
- ここで何かトラブルがあった事を言って、デックのトップ半分のパケットを相手に渡します。
- そして、パフォーマーが後ろを向いている間に、そのパケットの中に覚えたカードを探してもらう事を言います。実は、パフォーマーは、後ろを向いている間にボトムの4Aをアレンジします。
- 向き直って、覚えたカードがあったかどうかを聞いて、パフォーマンスよろしく相手カードを言い当てます。
- それから、この4Aトリックを行います。
その時にマーローは「このトリックには4Aを使います。しかし、私は普通の人のようにデックを見ながら4Aを捜したりはしません」と言ってこの4Aトリックを行っているようです。
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Photo: study by CodyR