<マーローのカードテクニック:6>
次に、“ダブル・フリップ・オーバー”のテクニックを使った、スタンレイ・コリンズという人の“コリンズエース”というカードトリックを紹介したいと思います。
- デックから4枚のA(エース)を取り出して≪写真1≫、それをテーブルへ、フェイスダウンで横に並べます≪写真2≫。
写真1
写真2
- それぞれのAの上に3枚のカードを配ったように見せますが、実際は4枚のカードを配ります。
- 4枚のカードを3枚のように配る簡単な方法は、初めから終りまで“ヒット・ダブル・リフト”を使います。
すなわち、右下コーナーで、最初は、2枚カードを1枚のようにダブルリフトをして、次にそのカード(2枚)を、右手の親指をトップに、そして人さし指と中指をボトムに付けて≪写真3≫持ち上げて、デックから離します≪写真4≫。
写真3
写真4
そしたらすぐに、左手親指は2回目のデックのトップカードを右側へ押し出して、そのカードの右下コーナーを、右手に持っているカードのトップと右手親指の下に差し込みます。
3回目のトップカードも同様に押し出して、右手にすでに持っているカードのトップと右手親指の下に差し込みます。
右手のすべての指は、見たところ、3枚のカードの右下コーナーを持って保持しています≪写真5≫。
写真5
もし、ダブルリフトが正しく出来たならば、その動作は、まるでトップ3枚のカードを単に取ったかのように見えます。
- 次に、この3枚のカード、実は4枚のカード、の左サイドをデックのトップに当てて揃えます≪写真6≫。つまり、左手は、下方へ傾けて、デックのバックをほとんど垂直にして、そのバックに右手の3枚カードの左サイドを当てて揃えます。
そして、このカードをフェイスダウンのまま、テーブルにおいてある最初のフェイスダウンのAの上に重ねます≪写真7≫。
写真6
写真7
- この同じ手順を繰り返して、全てのAの上に、一見、3枚のカードを置いたかのように見せて、4枚のカードを置きます。
- 4組のパケットに全ての注意を集中しながら、デックの残りを横に置きます≪写真8≫。
写真8
ここから、カードが視界から消える段階の手順に入る準備をします。
ここで使うテクニックの名前は、“ザ・フリップ・バニッシュ”と言います。
- 右手で最初のパケットを取り上げて、そのボトムフェイスのAを示します≪写真9≫。
写真9
- そのパケットをフェイスダウンにして、左手のメカニック・グリップで知られているディーリングポジションに持ちます。
- 左手親指はトップカードを押し出して、そのカードを、右手親指をトップに、その他の指をボトムにして取ります。
右手は“ダブル・フリップ・オーバー”で説明した同じ動作で、そのカードをテーブルの上にフェイスアップにひっくり返します≪写真10≫。
写真10
- 2番目のカードを押し出して、それを右手で取り、そのフェイスは見せないでパケットのボトムに廻します≪写真11≫。
写真11
- 次のカードを押し出して、右手で取り、そして今度は、そのカードを最初のテーブルカードの上に再びフェイスアップにひっくり返します≪写真12≫。
写真12
- 次のトップカードは再度、そのフェイスを見せないでトップからボトムへ移動させます。
- 今度は、新しいトップカードを取って、それをテーブルカードの上にフェイスアップにひっくり返して置く、前と同じ事を繰り返しているように見せます。
しかしながら、この段階では、実際に2枚のカードを1枚として取り上げます。
これは、“シングル・バックル”の方法を使って簡単に出来ます。
すなわち、左手の中指、薬指そして、小指で≪写真13≫のように、単に、ボトムカードを内側(左側)の方へ押さえ付けて、そのボトムカードを後ろ(左側)へ曲げることです。
写真13
- こうすると、右手の指は、上の2枚カードを簡単に取ることが出来ます。そして、それを、1枚のようにして、テーブルカードの上に、フェイスアップにひっくり返します。
- 左手に残っている最後のカードは、スナップをして、それもまた、テーブルカードの上にフェイスアップにターンして置きます。Aは、まるで消えてしまったかのように見えます≪写真14≫。
写真14
- 上記の動作の順序を残りのAのパケットで繰り返して、最初のパケットに重ねていきます。そうすると、全てのカードは、1ヶの大きなパケットになります≪写真15≫。最終的に、それを取り上げて、残りのデックのトップにフェイスダウンで置きます≪写真16≫。(Aは、全ての組から消えてしまいました。)
写真15
写真16
次の段階では、4枚のAをデックのトップに集めるために、それらをデックの中からより抜く“カル”というテクニックが必要になります。
この“カル”も多くのやり方がありますが、マーローは、ここでは、簡単な方法を紹介しています。
- デックのボトムから2枚のカードをトップにカットします≪写真17≫・≪写真18≫。
写真17
写真18
- トップから1枚ずつ5枚のカードをテーブルへ横一列に配ります≪写真19≫。それぞれの上に3枚のカードを1枚ずつ配り、5ヶのパケットを作ります。すると、4枚のAは5番目のパケットに集まります。パケットは全てフェイスダウンです。
写真19
- 4枚目のカードを配り終ったら、急に動作を止めて、“あっ、失礼!使うのは5組でなく4組だけでした。”と言って、すぐに5番目のパケットとAを取り上げて≪写真20≫そしてデックの上に戻します。しかしながら、Aの下に左手小指のブレイクを作ります≪写真21≫。
写真20
写真21
ここからクライマックスに入りますが、この中で、マーローは、前回で解説した“マーロー・カリー・チェンジ”というテクニックを使っています。
- 客にテーブル上の4組のパケットのうちの好きな1組を指さしてもらいます≪写真22≫。同時にそれは、彼に選択の自由を印象づけます。
写真22
- 1組のパケットを選んだら、それを右手で持ち上げて、テーブルのカーディシャンの左側に縦にして置きます≪写真23≫。
写真23
- 右手で3組のパケットを1組ずつフェイスアップにターンして、“あなたは、4組のパケットのうちの好きな1組を選んだ訳ですね”と言います。
- 右手は3組のパケットを広げながら≪写真24≫、左手は、“マーロー・カリー・チェンジ”を行う準備をします。
写真24
- 上記3段階での発言を続けながら、“でも、あなたは、ここでこのパケットを選びました。”と言います。
- 左手は、4枚のカードをフェイスアップにターンするために、カーディシャンの左側にあるカードに伸ばします。そして、まるで4枚のAをフェイスアップにターンしたかのように実際にチェンジを行います≪写真25≫・≪写真26≫。
写真25
写真26
≪写真24≫・≪写真25≫・≪写真26≫は、このマジックの核となるテクニック部分です。右手でフェイスアップにしていくカードに、観客の視線が全て注がれるように持っていきます。特に、≪写真24≫では分かりやすいように、左手のテクニック部分を静止して見せていますが、実際には、≪写真24≫から≪写真26≫まではほんの一瞬の動作であり、カードをつかみ上げたらすでにひっくり返して、全てが終了しています。
- Aがフェイスアップになったら、すぐに、そのカードを左手人さし指で広げながら、“あなたは、このパケットを選びました。エースです!”と言ってクライマックスに達します≪写真27≫。
写真27
― Malo In The Linking Ring P.6~7 ―
この“コリンズ・エース”というトリックは、マーローを初めとして多くのカーディシャンのお気に入りです。私も今まで、このトリックを多くの人から見せてもらいましたが、彼らの使っているテクニックは、なぜかもっと難しいものでした。
カードマジックの手順が長くなると、見ている人、特に素人の方は、集中できなくなります。つまり、見ていても、ごちゃごちゃして、そのトリックの意味が分からなくなってしまうのです。したがって、演じる方は、そのトリックのスピードの強弱、自然に見える手の動き、そして、タイミングなどを考える必要があります。そうした意味で、マーローは、この“コリンズ・エース”も、中で使っているテクニックを変えたのかもしれません。
Copyright © Tokyo Magic Co., Ltd.
著作権は各記事の筆者または(株)東京マジックに属します。
Photo: study by CodyR