<マーローのカードマジック:2>
もう一つ、マーローのカードトリックを紹介したいと思います。これに使っているテクニックは全く簡単で、しかも、他のカードトリックにも応用がきく、ちょっと小粋なテクニックです。
マーローは、テーブルに置いたフェイスアップの間違ったカードを簡単に正しいカードにチェンジする方法としてこのテクニックを考え出したそうです。“The Eidetic Slide”といって、現象は、1枚のテーブルに置いたフェイスアップカードとデックの中の1枚のカードの、目に見える入れ替えです。
- ダブルターンオーバーを行って、たとえばスペードの10を見せます。それをフェイスダウンに戻して、トップカードをデックの中に入れてしまいます。
再び、ダブルターンオーバーを行い、2枚のカードを1枚のようにフェイスアップのまま“マーロー・ツーカード・スロウ”を使ってテーブルの演技者近くに置きます。もし、その2枚のカードが斜めになるようでしたら、右手の人さし指の指先を、その2枚のカードの右下コーナーのエッジ側に付けて2枚のカードを一列に揃えます。
マーローのこのテクニックが少し難しいと思われる方は、フェイスアップの2枚のカードを1枚のように右手で持ち上げて、そのままテーブルへ置いてもいいと思いますが、実際はTwo Card Throwを使ったほうが本当に1枚のカードをテーブルへ置いたように見えます。
カードのインナーエンドは、演技者のほうに向き、クラブの5がフェイスアップになっています。
- 右手は、デックの両エンドを上から握って持ち上げ、そしてテーブルのクラブの5の横にもってきます≪写真1≫。
この段階で、演技者は“スペードの10はデックの中にあることを忘れないで下さい”と言います。
ここで右手は、直接テーブルカード(実際は2枚)の上に移動して、右手の親指の長さの部分を、そのフェイスカードのインナーエンドに接触させます。
≪写真2≫で、デックの約半分がテーブルカードを通り過ぎていることに注意します。
写真1
写真2
- 何のためらいもなく、右手を左上方へ移動させますが、そのときに、テーブルに置いていたカード(2枚)のフェイスカードだけを≪写真3≫のように一緒に持って行きます。この時に注意する事は、フェイスカードを右手指で挟んで持って行くのではなく、右手親指の1本分の長さの左側面をフェイスカードのインナーエンドに付けたまま、そのフェイスカードだけをテーブルの左斜め上にデックと共に滑らせます。ここが小粋なところだと思います。
この段階で、右手前腕(肘から手首まで)は、すでにチェンジしたカード・スペードの10を隠しています。
次に右手は、デックを≪写真4≫のようにリボンスプレッドします。そのときに、クラブの5のインナーエンドを見せないようにするために、デックをリボンスプレッドするその直前に右手親指と他の指でデックの両エンドを揃えます。この揃える動作は、ほんの1,2秒で、ぐずぐずしてはいけません。
写真3
写真4
- スペードの10が急に現れて驚きます。左手は、すぐにデックをすくい始めますが、右手はスプレッドの右エンドをまだ押えておきます。
そうして左手がスプレッドの約半分まですくったら、その時点でスプレッドを分けます。動きを止めないで左手は、そのすくったカードをスプレッドの残りの上に置きます。そして両手でデックを揃えます。
この動作の最中、演技者はスペードの10を見ながら“クラブの5は、デックの中にあるはずです。”と言います。
再びデックをリボンスプレッドして、フェイスアップのクラブの5を現わします。
- 前に述べたようにマーローは、元来、このテクニックを、テーブルに置いた間違ったフェイスアップカードを、相手が選んだカードに完全にチェンジするものとして行っていました。
この場合は、デックはフェイスアップで、テーブルカード(実は2枚)の右横で持っています。
テーブルカードのフェイスアップカードが違うと否定されたら、このスライドを行って、そして“あなたのカードは何でした?”ときいてデックをリボンスプレッドします。
この時までに右手は右側へ移動して、正しいカードが現れます。
このトリックを初めて見た時は、まさにカーディシャン・マーローの執念のようなものを感じざるを得ませんでした。難しい技を行わなくても不思議なマジックは幾らでもありますが、マーローの場合、それに妥協しないところが凄いといえます。これはミスディレクションとテクニックがマッチすることで驚異的な効果を生み出しているのです。
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Photo: study by CodyR