平川一彦

私とエド・マーロー
第4回

<マーローのカードマジック:1>

 ここでマーローのカードマジックを紹介したいと思いますが、使われているテクニックというかタイミングは、簡単なように見えて、案外難しいので多少の練習が必要です。もちろん、マーローを研究している人には、そうでもないと思います。

 タイトルは、“ターンオーバー・カード”といって、1989年3月に講演された“ラスベガス・デザート・セミナー・レクチャー”を1冊にしたマーローの、“SO SOON?”p.10~11の、瞬間的な動作で機敏に行うクイックトリックです。

 現象としては、相手に1枚のカードをピークしてもらい、そのデックをテーブルにドリブルすると、相手のカードがドリブルしたカードの上でフェイスアップになっています。

  1. 相手に1枚のカードをピークしてもらい、その下に左手小指の先でブレイクを保ちます。右手でデックの両エンドを一見、揃えるようなふりをしながら左手の指で相手のカードを少しだけデックの外(右側)へサイドジョッグします。
    そして、そのカードの右上コーナーを右手の小指と薬指のベースでクリップします。≪写真1A≫は、この動作を上から見たところで、≪写真1B≫は、それを下から見たところを示しています。
  2. 写真1A
    写真1A
    写真1B
    写真1B
  3. 次に右手は、デックをテーブルの上に、約20cmの所からテーブルへドリブルします。しかし、クリップしていた相手カードは、全てのカードをドリブルしてしまうまで≪写真2≫のように保持したままにしておきます。
    全てのカードをドリブルし終るやいなや、右手をほんの少し上方へ動かして、それと同時にクリップカードを放します。右手のこの上方への動きがクリップカードを≪写真3≫のように、ドリブルしたカードの上へフェイスアップにさせます。
  4. 写真2
    写真2
    写真3
    写真3
  5. このカード展開の“コツ”を覚えるために、少し実際に試してみる必要があります。
    最も重要なポイントは、デックのドリブルとともに相手カードをターンするタイミングです。言い換えると、カードのターンは、ドリブルしたカードのすぐ後に、ただちに続けなければなりません。
    そしてまた、ドリブルした後でなく、ドリブルの最中の一部であるように見えなければいけません。
  6. 選ばれた2枚のカードをドリブルしたカードの上にフェイスアップで現わすこともできます。
    まず一人にデックの下半分の部分から1枚のカードをピークしてもらい、そのカードの下に左手小指のブレイクを作ります。
    二人目にデックの上半分の部分から1枚のカードをピークしてもらい、今度はそのカードの下に左手の薬指のブレイクを作ります。
  7. 両エンドを揃える動作で2枚のカードをサイドジョッグして、右手の小指と薬指の第二関節でクリップします。
    次にデックをドリブルしますが、このとき、2枚のクリップしたカードを前に説明したようにドリブルしたカードの上にフェイスアップに落します。

 以上で解説を終りますが、特に2段階と3段階でのタイミングが重要です。しかし、それを言葉で言い表わすのは、とても難しい作業になります。その“コツ”を覚えれば、ドリブルが終ったと同時に相手カードがドリブルしたカードの上でフェイスアップになっています。

 私はこのトリックを長年やっていますが、これは、相手が、何かカードのマジックをちょっと見せてください、と言った時に行うと効果的です。

 ≪ 第3回              第5回