平川一彦

ベーシック・ムーブ

第27回

ミラクルチェンジ No1

 そのNo1の中から、基本動作と4つの方法の1つを、
私の意見を交えながら、ここに紹介してみます。

    現象

    パフォーマーは、右手に持った1枚のカードを客に示して、それをフェイスダ ウンでテーブルへ置きます。客がそのテーブルカードをフェイスアップにターンすると、違うカードになっ ています。最初にベーシックムーブを説明してから次にハンドリングを説明します。

    ベーシックムーブ

  1. 左手はデックを<写真1>のように、フェイスダウンで ディーリングポジションに持ち、左手親指をデックのトップ中央 付近につけて置きます。
    写真1
  2. 次に、右手人差指は<写真2>のように、デックの右下コーナーで、 1枚のカードを持ち上げますが、実際は右手人差指はダブルリフトで 2枚のカードを1枚のように持ち上げて、デックのトップに フェイスアップにします。
    写真2
  3. カード(2枚)をデックのトップへフェイスアップにターンする時は <写真3>のように、そのカードをデックのインナーエンド側に少しインジョグします。 そして左手親指で、フェイスアップカード(2枚)の上部近くを押さえます。
    写真3
  4. 次に右手の人差指と中指はフェイスアップカードのインナーエンドの 左下コーナー(インデックスのない方)を<写真4>のように握ります。
    つまり、右手の甲を上に向けて、その人差指と中指をインジョグカードの 左下コーナーのフェイスに付けて、右手親指を同じコーナーの バックに付けて握ります。 右手の薬指と小指は、手の平の方へ曲げておきます。
    写真4
  5. 右手は親指、人差指、中指の3本でカード2枚を 一見、1枚のカードのように持ってデックから持ち上げて、 <写真5>のようにそのフェイスを客に示します。 この時に右手の薬指と小指はまだ手の平の方へ曲げておきます。
    写真5
  6. 次に右手は、二つの動作を一度に行います。 まず右手を<写真5>の位置から、テーブルの方へ下しながら、 しかも手首を自分の方へ曲げながら、右手の薬指と小指を伸ばして、 中指に並べます。 すると、この時点で右手4本指の指先は全て、カードのフェイスに付いています。 そして、右手は持っているカード(2枚)を<写真6>のようにフェイスダウンで テーブルへ付けます。 するとカードは少し縦の位置になり、しかもそのカードのほとんどインナーエンドの フェイスと、右手の薬指と小指の甲側の第1間接がテーブルへタッチします。
    <写真6>はカード(2枚)をテーブルへ付けた時を左横から見たところで、 <写真7>はそれを客から見たところをそれぞれ示しています。
    写真6
    写真7
  7. さて、ちょうどここから、実際の動きが始まります。
    カードのフェイスに付いている右手の4本指をカードのフェイスに押し付けて、 内側、つまり手の平の方へ動かしながら、右手の親指は2枚カードの トップカードだけを<写真8>のように前方(左側)へ押し出します。
    <写真9>はそれを客からみたところです。そして右手親指はトップカードを 完全にテーブルへ置くまで押し続けます。
    写真8
    写真9
    しかし、マーローはここで何も注意点を説明していませんが、ここで注意することは <写真6>の位置になった時に、初めて右手の親指でトップカードを左側へ押し出します。
    それ以前にこの動作(押し出し)を行うと、カードのずれるのがチラッと見えてしまいます。 それと、トップカードを完全にテーブルへ置くまで右手親指で押し続けると、 トップカードの右サイドとボトムカードの左サイドが放たれた瞬間にパチッと音がしてしまいます。
    この気になる音を消す方法を、いくらバニッシュが好きな私でも言葉ではうまく言い表せませんが、 私は次のように行っています。
    即ち、右手親指がトップカードを左側へ押していき、1枚のカードが放たれる時に、 親指の力を少しだけ抜くと音はしません。
    言い換えると、親指はトップカードがテーブルへ付くまで、そのバックを押し続けないのです。 1枚のカードのサイドが放たれる瞬間に親指の力を抜くと、親指はトップカードからほんの少しだけ 上に上がって、トップカードは親指で押された惰性で自然とテーブルの上に音も無く落ちます。 このような場合の音を消す方法を確かマーローは他の自分の作品の中に書いていましたが それが何という本だったか、今は思い出せません。
  8. 結果として1枚のカードがフェイスダウンでテーブルにあり、右手は<写真10>のように、少しこぶしの形になっています。 ちょうどこの時の右手の人差指と親指は、元のカード(フェイスカード)の 左上コーナーを挟んでいて、その右上のコーナーは右手の平に食い込んでいます。
    写真10
  9. 次に右手親指の第1間接をパームカードの 左サイドの左上コーナーに付けます。 当然、カードは<写真11>のように、右手親指の指先と、 手の平のベースの間で保持していて、右手の指は自由に伸ばせます(マーロー・レア・アングル・パーム)。 <写真12><写真13>はそれぞれ、 <写真11>を下からと、左横から見たところです。
    写真11
    写真12
    写真13
  10. それから、右手の指を真っすぐに伸ばしながら、 右腕を後方へ動かします。そうすると自然に右手の指先が <写真14>のようにテーブルカードの右上コーナー付近にタッチします。 客からは<写真15>のように見えています。
    写真14
    写真15
  11. 6~10段階までの動作は、右手の外側(小指サイド)をテーブルに付けて 行います。 しかしマーローは、右手をテーブルにタッチさせないで、約2~3cm上から トップカードをテーブルへ落とす方法も行っているようです。 私も、どちらかと言うと、右手の小指サイドが、テーブルにタッチするか しないか位の高さで行っています。
  12. 以上が基本動作です。そして、この時点までは”チェンジ”ではなく、 ”スイッチ”のテクニックです。 ではどこが”チェンジ”なのかというと、最後にフェイスダウンの テーブルカードをフェイスアップにした時に、前と違ったカードであると相手または 自分が認識したときに初めて”チェンジ”となります。 ここからマーローは、右手にパームしたカードの処理の仕方と、 このベーシック・ムーブを座った時と立った時に行う4つの方法と、 さらにそのバリエーションの1つを説明しています。 それでは、その中のパームカードの処理を使った1つの方法を 私なりに説明して見ましょう。

    方法1

    これは座って行う方法です。
  1. 今まで説明したベーシック・ムーブの1~6段階を行います。
  2. そして、カードをテーブルへ<写真6>のように置く時に、パフォーマー側に より近いテーブルエッジ約12、3cmの所に置きます。 これは次の動作に大変重要な事です。
  3. 次に、7~11段階の”スイッチ”の動作を続けます。
  4. そうすると、テーブルカードは、テーブルエッジの近くに置いてあるので、 右手の指を真っすぐに伸ばして、右腕を後ろへ引いた時に、パームカードの後方が <写真16>のように、テーブルエッジから少し下向きに突き出ます。
    写真16
  5. 続けて右手親指の力を緩めて、パームカードを膝に落とします(ラッピング)。 もちろん、客にはこの動きは見えません。
  6. 右手はパームカードが親指から放れるやいなや、テーブルカードを <写真17>のように、テーブルの中央へ押し出します。
    写真17
  7. 次に、右手はテーブルカードをゆっくりとフェイスアップにターンします。 ここで初めて”チェンジ”となります。 その間に、まだデックを持っている左手を膝にやり、ラッピングしたカードを 左手だけでデックのトップに回収します。 ここではタイミングが重要です。 ラッピングのカードを回収するのに、いつ左手を膝にやるかというと、 私(平川)は、右手がテーブルカードを中央に押し出す時に左手を 膝に動かします。

 皆さん、このテクニックをやってみて如何でしたか?
マーローはこの後に3つの方法と1つのバリエーションを書き、 その次にミラクルチェンジNo2、No3と続けて、そして最後に トリックを3つ付け加えています。
さて次の本は・・・

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