第11回
ブレイク
【ブレイク】これを英和辞典で引くと、【砕く・割る・中断する・逃げ出す、また、破壊・裂け目・割れ目】などと、あまり良い意味はありませんが、カードマジックでは、その中の裂け目・割れ目を使います。
私は、分け目・分かれ目という言い方をしていますが、愛好家同志の時は、ブレイクとそのまま言っています。
このテクニックは、第10回で解説したインジョグの時に使いますが、アウトジョグはそれ自体、現在はあまり使わないので、ここでは、インジョグの時だけを解説します。
第10回で解説したインジョグの手順(ルーティーン)を行い、インジョグカードが出ているデックを両手で<写真1>のように持ちます。
つまり、右手の中指と薬指はデックのアウターエンドのトップコーナー近くに付けて、右手人さし指はトップサイドのアウターコーナー近くに付けます。
そして、右手親指は、その指先のボール部をインジョグカードの縁のトップコーナー近くに付けます。
もちろん、そのインジョグカードのフェイスには左手小指のほとんど先端がタッチしています。
次の動作は注意して、そして、正確に覚えて下さい。
インジョグカードのトップコーナー近くの縁に付けている右手親指の指先でその縁を左方向へ押しながら、デックの中に押し込んでいきます。
すると、そのジョグカードよりトップ(左側)のパケットが自動的に左側へ動いてデックのインナーエンド側に“分け目”が出来ます<写真2>。
その分け目を“ブレイク”と言います。
インジョグカードをデックの中へ完全に押し込んで、そこに出来た“ブレイク”を右手親指のボール部で押さえて保持しながら、デックの両エンドを右手の中指、薬指、人さし指そして親指で握ります<写真3>。
ここから他のテクニックを使いながら、いろいろなカードトリックに入っていきます。
今まで、ジョグ、ブレイクを解説してきましたが、これらのテクニックは何も、オーバーハンドシャッフルの形の時だけに作るものとは限りません。
例えば、デックを両手の間に広げたり閉じたりする時、他のシャッフルの時、また、その他のテクニックの時などにも使いますし、そしてまた、ブレイクも親指だけに作るとは限りません。
トリックによっては、小指、薬指、中指、親指のベース、そして時には、小指と薬指にブレイク(ダブルブレイク)を作ることもあります。
また、ブレイクを段階的に説明しましたが、これを作る時は、手元をじっと見つめてはいけません。
ちらっと見てすぐに相手を見ながら、右手でデックを握ると同時に、言い換えると、デックに触れると同時に、右手の親指の感覚で作ります。
インジョグもこのブレイクもデックの内側(インナーエンド)にありますが、客がパフォーマーのすぐ後ろにいない限り、客にはほとんど気付かれません。