IBMやSAMの月例会では、毎回テーマが決められて、参加者がマジックのレパートリーやパーフォーマンスのノウハウを増やしやすいような実践的な活動が印象的でした。
例会以外の活動で驚いたのは、なんとセントルイスではレクチャーが全て無料という事です。ダロー、マイケル・アマー、ユージン・バーガーなどのビッグネームのレクチャーが年に何度もありますが、IBMかSAMの支部の会員であれば、レクチャーの参加は完全に無料です。レクチャラーは、入場料ではなくレクチャーノートや商品の販売で収入を得るというシステムです。IBM,SAMの支部もレクチャーでの興業収入などは期待しておらず、逆に運営費から補助をしていると思います。
無料でレクチャーに参加できるだけでなく、レクチャー後には講師とのフリーディスカッションや個人的な質問も可能で、大変有益というより夢のようなシステムでした。参加費が非常に高い日本のマジックのレクチャーも、もう少し工夫できないものかと思います。
支部の年会費も15$程度で、これだけで月例会などでは地元のプロが指導してくれますし、上記のようにレクチャーも無料で受けられます。会員によるオークションも毎年あってマジックグッズも安価に買えますし、アメリカでは本当にお金をかけずにマジックを楽しむ事ができます。
一方、日本の学生マジックのようなシステムや風土はなく、こちらは日本独特のマジックの文化として大切にしたいものです。
SAMもIBMも会員の安い年会費だけではレクチャーなどの運営費が不十分という事で、 資金確保のためにファンドレイジングのマジックショーを行います。 添付はIBMのファンドレイジングのマジックショーのチラシ(私の名前が入っている)です。
夜でも6$で地元のプロのマジックが楽しめます。おしゃべりのマジックが多いですが、さすがにプロのこなれた演技は結構楽しめます。プロのマジシャンが裏方をやってくれるので、当日の短い打ち合わせだけで進行はいつも大変スムーズです。
観客はマジック関係者ではなく一般の子供が中心になりますが、最後にロビーでサイン会を行うので、ボランティアで出演したプロマジシャンとしては、営業用に名前を売る良いチャンスとして利用できるメリットがあります。
ちなみにアメリカでは、子どもの誕生会などにマジシャンを呼ぶというのは結構盛んで、イエローページにも必ずといって良いほどエンターテイナーの項目にマジシャンの欄があります。
IBMもSAMも子供のためのプログラムもあり、すそ野が広いという印象です。
余談ですが、長い目で長期的な視野から、子どもの時代からファンを増やすというのは、
マジック以外にスポーツでも行われる戦略で、私の娘は野茂の試合を見に行って、カージナルスのロゴの入ったグローブを貰いました。
セントルイスで最も読まれている新聞St.Louis Post-Dispatchでのマジックショーの紹介記事です。
日本にもファンのいるセントルイスシンフォニーよりも上で紹介されています。ちなみに日本の文化は人気があり、もしミリオンカード以外に和妻ができればセントルイスでプロとしてやっていけるのではないかと思うほどでした。
IBM、SAMという著名なサークル以外にも、プロのマジシャンが中心となったセントルイス・ラウンドテーブルという集まりもありました。こちらは会費も義務も一切なく、毎週土曜の昼にファミリーレストランで一緒に食事を取りながら情報交換を行うもので、ゲストも自由に参加できます。
実力があるプロのメンバーは、IBMかSAMのどちらかに軸足をおいて、支部の役員を経て本部の役員を目指す形が一般的ですが、ラウンドテーブルはハーリー・デイというどちらの組織にも偏らない年配のプロが主催しているもので、IMBとSAMの両方の主なメンバーが夫婦で参加するので、十名以上が毎週集まります。
参加者は毎回サイン帳に記入するという形で記録が残りますが、そのような活動が何十年も続いています。このような活動が、Midwest Magic JubileeやSt.Louis Magical Heritage AwardsなどでSAMとIBMが協力できる素地があるのかも知れません。
私の場合には、IBM、SAMが主催するパーティやファンドレイジングのステージなどに常連のように出演していました。クロースアップとしゃべくりは無茶苦茶上手い人が多いのですが、スライハンド系は人材不足でショーのアクセントっとして重宝されました。
スライハンドは英語が不要なので楽でしたが、今になって思えば、もっとクロースアップを演じて英語のプレゼンテーションの練習をしておけば良かったとの反省はあります。