マジックの話の前に、セントルイスの歴史や文化について紹介したいと思います。セントルイス(聖ルイ9世が語源)という名前が示すように、もともとはフランス領で、1803年に第3代大統領のジェファーソンがナポレオンから購入(ルイジアナ買収)してアメリカ領土になりました。
中国では、北京オリンピック(2008年)と上海万博(2010年)で盛り上がりましたが、なんと驚くなかれ、セントルイスでは1904年にアテネ、パリに続く第3回のオリンピックと万国博覧会が同時に開催されており、その当時の繁栄が偲ばれます。
セントルイス・オリンピックではゴルフや綱引きなどもあったようで、その時のオリンピックの会場はForest Park(フォーレスト・パーク)として今も残っています。また同時開催の万国博覧会で、世界で初めてハンバーガーやホットドック、コーン付きアイスクリームやアイスティーなどが紹介されており、これらは言わばセントルイスが発祥の地です。
蛇足ですがマクドナルドのロゴはダブルアーチとも言われ、ハンバーガー発祥の地のセントルイスのゲーウェイアーチをイメージしたという説もあります。真偽のほどはともかく、確かに形はそっくりです。
ニューヨークはエンパイヤーステート(The Empire State)、カリフォルニアはゴールデンステート(The Golden State)など、アメリカの州にはそれぞれニックネームがありますが、ミズーリ州のニックネームは“Show-Me State”で車のナンバープレートにも書かれています。
これは、南北戦争でちょうど境目(ミズーリは奴隷州)の州であったので、ミズーリ州では相手が敵か味方なのかを疑って“Show me”(証拠を見せろ)と言っていたからとか・・。
ちなみに、”He is from Missouri”というと、疑り深い人という意味もあります。
アメリカでは州だけでなく都市にもそれぞれニックネームがあります。例えばニューヨークは”Big Apple”(ビッグ・アップル)、デトロイトは “Motor City”(自動車の街)、ピッツバーグは ”Steel City”(鉄鋼の街) などで、映画のタイトルにもなった ”Sin City” (罪、歓楽の街)はラスベガスの事です。
中西部の主要都市であるセントルイスのニックネームは“Gateway City”(西部への玄関口)です。前回地図で示したように、セントルイスは地理的には明らかにアメリカ本土の中央より東側に位置するのですが、そこを「中西部」というところにアメリカ人の心理を感じます。
セントルイス出身の有名人と言えば、「翼よ、あれが巴里の灯だ!」でお馴染みの、世界で初めて大西洋単独無着陸飛行を行ったチャールズ・リンドバーグです。この時のリンドバーグの愛機「スピリット・オブ・セントルイス」の実物大のレプリカがランバート・セントルイス国際空港に展示されています。
“スピリット・オブ・セントルイス”の本物はワシントンDCの航空宇宙博物館にあります。入口正面上部にライト兄弟の人類最初の飛行機と並んで展示されている事からも、アメリカ人がリンドバーグの業績を如何に誇りにしている事が判ります。
日本人の私にはスピリット・オブ・セントルイスよりもライト兄弟の飛行機の方がはるかに感動モノでした。あまりに真新しく見えて、念のために「本物だよね?」って係の人に確認したほどです。「ここには偽物など一切ない」と得意げに言われましたが、広島原爆のエノラ・ゲイからアポロ11号など、まさにここでしか見られない本物の歴史があって、アメリカの数ある博物館の中でも航空宇宙博物館は必見です。
とにかくセントルイスと言えば、ゲートウェイ・アーチと“スピリット・オブ・セントルイス”で、セントルイス魂はフロンティア・スピリット(西部開拓魂)に通じるものです。日本に比べればはるかに歴史の短いアメリカですが、それだけに歴史を大事にする風土も感じました。
蛇足ですが、カタカナ読みで「セントルイス」と発音しても、アメリカ人にはまず通じません。
強いて言えば「セン・ルイス」です。LとRの問題もありますが、
念のために州名も加えて「セン・ルイス、ミズーリ」
と言えば確実に通じます。
英語の発音は難しい・・