古川令

FISM ACM 2017


 私が初めてFISMにチャレンジした2000年当時は、国を代表するマジックの組織のプレジデントの推薦状があれば、ビデオ審査だけでFISMに出場できました。しかし今は、国内予選、アジア予選を勝たないとFISM本戦に出場ができなくなり、出場するだけでも大変な大会になってしまいました。
 アジア予選はFISM ASIAと呼ばれる事が多いですが、これは組織の名前で、大会の正式名称はFISM ACMです。 2017年11月2日から5日まで岐阜県の長良川国際会議場で開催され、2月の日本奇術協会主催の予選会で国内予選を通過できた私も参加し、残念なミスもありましたが、お蔭様でなんとか本戦への出場権は得る事ができました。

 ご参考までにコンテストまでの準備を簡単にご紹介しますと、国際大会なので諸連絡は英語のみ、キューシート、演技映像、BGM(音と著作権情報)、紹介写真などを事前にネットのメガファイル便などで送付します。写真はJPEG、BGMはMP3、ビデオはMP4などの指定があり、変換が必要な場合もあります。水、火、紙吹雪などの特殊な効果では、細かく申請する必要があります。
 キューシートの照明は、前回の韓国でのアジア予選と同様で決まったパターンの中から選ぶ形でした。おそらく、今後はこのような形になると思います。著作権情報は演奏者だけでなく、作詞作曲編曲者や使用時間(秒)など細かな情報を求められました(JSRACへの支払いのためだけですので、わからなければ空白で問題ないと思います)。



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 ちなみにこれが私のCue sheetで、大変シンプルです。最後に3秒の暗転で曲ピタの印象を与える作戦でしたが、わざとらしい演出がどうも私のスタイルに合わなかったので、おそらくFISM本番ではカット、もっとシンプルになります。 以前にTMAや4Fで頂いたスタンディングオベーションはMCによるカーテンコールであり、暗転したりチェイサーの曲で再アピールするよりも、フェードアウトで余韻を残し、後はMCに任せる形が自分に合っていると思います。ここも、流行は追わずに自分のスタイルで考えます。

 会場でのリハーサルは厳密に10分以内です。今回は日本語でOKでしたが、海外では言葉の問題もありますし、キューシートはできるだけシンプルな方が良いと思います。ちなみにキューシートでよくあるトラブルは、改訂版を送ったのに改定されていないというケースで、実際に今回もそのようなトラブルもありました。照明のパターンを変える事は容易ですが、変えるタイミングは事前にプログラムされているので、時間の無いリハで照明の変更のタイミングを変えるのはリスクが高く避けた方が良いように思います。
 私自身も以前に、音源のCDを指示に従って送ってOKも貰っていたのに、コンテストの現場には私の音源が無かったという経験もあります。従って、最新のキューシートと音源は念のため持参するのが安心です。ちなみに昔の音源はCDでしたが、今後はパソコンに入れられるUSBメモリーが主流になると思います。


 私の演技の場合、空中にスピンさせたカードの見やすさと演技の出来栄えがかなり相関します。今回の長良川国際会議場のホールは全照スポットなしで十分明るく、さらに後方からのバックライトも使えたので、今までになく演じやすい照明でした。しかし本戦は照明が暗い韓国なので、苦労するかも知れません。

私の場合、照明が明るいと落ち着いて演技ができます。今回のコンテストでは、観客の皆様が応援してくれるような雰囲気で、お蔭様で演技の最初から沢山の拍手歓声を頂きました。特にファンプロダクションでは、4~5回目位から歓声が高まり、10回を超えると大きなどよめきでした。一般の観客ではなく、マニアが集うFISMの予選でも基本技法のファンプロダクションで歓声が得られたという事で、自分が目指すミリオンカードの方向性が間違ってないない事を改めて確認できました。 私はストーリー性などを軽視しているからか、歓声の大きさがそのままスコアには結びつかないという残念さはありますが、スライハンドマジックの楽しさを追求する今のスタイルは続けたいと思います。
 FISM ACMでは、ステージ19名(日本人8名)、クロースアップ9名(日本人3名)が本戦への出場権を得ました。還暦過ぎての私の挑戦は、いよいよこれからが本番です。




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