私がマジックを始めたきっかけは、阪大に入学後に奇術研究会(OUMC)に入会した事でした。そのOUMCの創設期からコーチを務めて頂いたのが吉峯昭二さんで、マジックについて、技術や考え方など本当に多くの事を教えて頂きました。昭二というお名前から、昭和2年生まれかと思いましたが、もう少しお若かったようです。
このラビリンスでも以前に書いたと思いますが、吉峯さんからのミリオンカードについての忘れられない言葉が、「沢山のカードを使って沢山に見せる事は誰でもできる。君は、少ないカードで如何に沢山に見せるかを考えなさい」でした。このテーマを突き詰めているのが私のスタイルで、吉峯コーチは最大の恩師です。その吉峯さんですが、何年か前に最後の年賀状の代わりにとご丁寧な手紙を頂き、OUMC50周年記念のパーティでご挨拶をさせて頂いたのが、結局最後になりました。
吉峯さんが亡くなられてから気づいた事は、吉峯さんの情報がほとんど残っていない事でした。今の時代は、私のような者でもネット検索でひっかかり、仕事で初対面の方から、「マジックがご趣味ですか?」などと言われる事がある位、情報に溢れています。
吉峯さんは、OUMCの顧問として約半世紀もご指導いただき、スペイドクラブというマジックのサークルを主催され、関西奇術連盟の役員も長くされていました。私の学生時代は関西では有名な方でしたが、今ネットで検索しても、ほとんど何もヒットしません。
マジックの理論や考え方においては、複数の方から同じような考え方を聞く事も多く、誰がオリジナルか判らない事は多いです。しかしミリオンカードで「少ない枚数」にこだわった意見は吉峯さん以外から伺った事がありません。
「沢山のカードを沢山に見せるのは、誰でもできる」という表現が実に巧みで、そこに私は挑戦意欲も駆り立てられました。「ファンプロダクションは5枚開いて、4枚捨てる」と教えられれば、「3枚でできないか?」という気持ちになるわけです。面白いもので、そのような見方をすると、基本技法でもまだ改良の余地が見えて、還暦過ぎても練習がやめられない状態です。
そのようなお言葉を頂いた恩師の写真をここに残し、私も精進を続けたら、将来ささやかな恩返しになるかもしれないと考えて、創立50年の記念パーティでのお写真を掲載させて頂きます。
なお、これでミリオンカードのシリーズがおしまいではなく、私の挑戦が続く限りはまだまだ続きます。