古川令

ファンプロダクションでのテクニック(2)

 これもファンプロダクションへのこだわりのテクニックです。ファンプロダクションは、ミリオンカードの基本技法で完成されたテクニックと考えられていると思いますが、本当に不思議なファンプロダクションを演ずるのは意外に難しく、非常に奥が深い技法と思います。今回は読んでよく判らなくても、「たかがファンプロダクションで、こんな事を考えている人がいるのか」 という事を感じていただければと思います。

  1. 最後のカードだけ、遅らせて捨てる
     文章でうまく伝わるかどうか判りませんが、バックパームしながらファンを一度にバサっと捨てるのではなく、ファンを捨てながら最後の一枚を、一瞬親指でごく軽く保持してから捨てます。その結果、最後のカードの残像が残り、カードを捨てる時間がちょっと長く感じられる結果として、より多くのカードを捨てたような印象を与えられます。
     私のファンプロダクションでは、捨てるカードは親指と手のひらの間を通過して捨てます。これは、親指と手のひらの間からカードが落ちるのが最も捨てたように見えるからで、それをより強調できる形として考えたのがこの方法です。 写真では3~4枚のファンを捨てる瞬間で、最初のカードはすでに帽子の中の状態です。この状態から最後のジョーカーが一瞬遅れて捨てられます。ほんの一瞬の動きですが、カードが捨てられる時間が少し長く感じられる結果、より多くのカードが捨てられたような錯覚を醸し出せます。ファンを捨てる回数が多いほど、累積効果が大きくなると考えています。
  2. カードスピンを入れる
     ファンを捨てる際に1のテクニックの要領で最後の1枚だけを残します。カードを親指と中指で保持して、写真のように薬指をカードの縁に添えます。そのまま薬指でカードを弾いて軽くスピンさせて投げ上げ、そのまま左手でキャッチして捨てます。
     なお、カードスピンを入れる場合には、最後のカードを掴み損ねるリスクを減らすために、3枚ではなく4枚捨てる事にしています。一枚多く捨ててもその価値が感じられるテクニックです。ファンプロダクションで、捨てる枚数ギリギリの3枚の捨て方と、ちょっと余裕の4枚の捨て方の使い分けができるようになれば、古川式のファンプロダクションの免許皆伝です(笑)。

 蛇足ですが、私の手順ではカードスピンをいろいろな場面で使っています。その結果、ジャグリングっぽいと言われる事がありますが、私は遊び感覚で見せるジャグリング的な楽しさ(フラリッシュ)はスライハンドマジックでの大事な要素と思います。マジックには、見ていて「楽しい」という要素が非常に大事と考えております。テクニックを全面に出して見得を切るような見せ方は好みませんが、フラリッシュであれば、観客も肩が凝らずに楽しめます。ちなみに私の手順で最初の歓声はブーメランカード、後半では土星カードです。

 また、カードスピンでは、空間を使う事で演技を大きく見せる効果もあります。さらに大事な事は、私の手順ではマジック本来の不思議さのための布石になっている事です。パームした手でカードスピンを行う事が、手が空というイメージに有効である事は紹介しましたが。それだけでなく、例えばカードスピンで空中の回転するカードは1枚というイメージを植え付けられる結果、以前にご紹介したスピン&ファンプロダクション(スピンしたカードからのファンの出現)が本当に不思議になります。またブーメランカードで飛ばしたカードが手元に戻る現象は土星カードをテクニックと錯覚させる重要な役割があります。

 カードの見せ方に多くのこだわりを入れた結果、いろいろなオリジナルの技法ができましたが、逆に「絶対練習もしない」という逆の意味でのこだわりの技法もありますので、次回はそのお話をしたいと思います。

ファンプロダクションでのテクニック(1)   練習しないカードテクニック