これもファンプロダクションへのこだわりのテクニックです。ファンプロダクションは、ミリオンカードの基本技法で完成されたテクニックと考えられていると思いますが、本当に不思議なファンプロダクションを演ずるのは意外に難しく、非常に奥が深い技法と思います。今回は読んでよく判らなくても、「たかがファンプロダクションで、こんな事を考えている人がいるのか」
という事を感じていただければと思います。
蛇足ですが、私の手順ではカードスピンをいろいろな場面で使っています。その結果、ジャグリングっぽいと言われる事がありますが、私は遊び感覚で見せるジャグリング的な楽しさ(フラリッシュ)はスライハンドマジックでの大事な要素と思います。マジックには、見ていて「楽しい」という要素が非常に大事と考えております。テクニックを全面に出して見得を切るような見せ方は好みませんが、フラリッシュであれば、観客も肩が凝らずに楽しめます。ちなみに私の手順で最初の歓声はブーメランカード、後半では土星カードです。
また、カードスピンでは、空間を使う事で演技を大きく見せる効果もあります。さらに大事な事は、私の手順ではマジック本来の不思議さのための布石になっている事です。パームした手でカードスピンを行う事が、手が空というイメージに有効である事は紹介しましたが。それだけでなく、例えばカードスピンで空中の回転するカードは1枚というイメージを植え付けられる結果、以前にご紹介したスピン&ファンプロダクション(スピンしたカードからのファンの出現)が本当に不思議になります。またブーメランカードで飛ばしたカードが手元に戻る現象は土星カードをテクニックと錯覚させる重要な役割があります。
カードの見せ方に多くのこだわりを入れた結果、いろいろなオリジナルの技法ができましたが、逆に「絶対練習もしない」という逆の意味でのこだわりの技法もありますので、次回はそのお話をしたいと思います。