古川令

土星カード



 私が考えたミリオンカードの現象の中で、最もマジシャンに演じられているのが、スピンをかけて投げたカードが体の周りを1回転する土星カードではないかと思います。カードが体の周りを回転するという現象そのものは私のオリジナルではありませんが、体を回転させずにカードだけが体の周りを回転するという部分が私の改良点で、その事に非常に大きな効果があります。

 原案の考案者は不明ですが、体を回転させるタイプの土星カードをジャンボカードで演じたのはリチャード・ロスが最初ではないかと思います。彼は体が観客の後ろを向く事を利用して、火のついたキャンドルを取り出すという演出で、体を回転させる事を巧みに演技に利用していました。
 大学の3年のゴールデンウィーク明けに、ジャンボカードで従来の方法の土星カードを初めて大学のサークルで披露した時、どっと歓声があがりましたが、やはり「なんで体を回転させるの?」という声もありました。実は私もちょっと気になっていたので、「やっぱり、そうだよね」とその場でネタを修正したら、即「出来た!」という思い出のマジックです。

 試された方は判ると思うのですが、実はこの現象はレギュラーカードでは難しく、ジャンボカードの方がはるかにやり易いのです。私の方法がそれまで誰にも演じられなかったのは、カードのサイズによるところが大きいのかも知れません。

 土星カードは、私の手順の中で最も盛り上がる場面のひとつですが、実は同じ演技を他の人が演じても、必ずしも同様の反応にはなりません。ここでは演技の伏線の重要性についても書いておきたいと思います。



 土星カードをいきなり演じた場合、観客からは、テクニックなのかマジックなのかがはっきりしないのではないでしょうか?私の手順では、前半にブーメランカードを配しており、特に体の背後から飛ばしたカードがブーメランのように戻ってくるというフラリッシュで一度盛り上げており、これが大きな布石となっています。あるマジシャンから、「初めて仕掛けのない土星カードを見ました」と言って頂いた事もあります。

 他のカード・マニピュレーターの方々とは異なり、私のジャンボカード(マンモスカード)のプロダクションは技術的には易しい方法です。これも土星カードと同様に、それまでのレギュラーカードでの現象が布石として効いていると思います。  スライハンドでは、個々のテクニックが大事なのは言うまでもありませんが、ちょっとした手順の工夫やサトルティの効果も忘れてはいけないと思います。

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