華やかなミリオンカードにおいて、ファンプロダクションと双璧のテクニックがシングルカードプロダクション、所謂“一枚出し”です。 いろいろな方法がありますが、私はバックパーム、フロントパーム、インターロックの3種類のポジションからのプロダクションで行っており、それぞれの方法で意識している点を紹介したいと思います。
バックパームのところでも書いたように、私はより角度に強いという理由で、深いパームからのプロダクションを行っており、写真のように出現します。
ファンプロダクションのパームであれば、もう少しカードの端を持つ形で出現させられるのですが、パームが見えると不思議さは無くなるので、背に腹は代えられないというところです。不自然さについては、手や全体の動きの柔らかさでカバーするという考えです。
カードを少しでも多く出現させたように見せるためには、カードを最後まで同じようなペースで出現させるのではなく、途中でちょっと間をとって「もう無い」と思わせる事も大事です。連続したカードの出現という一連の現象ではなく、完全に空の手からカードが出現するという現象が何度も繰り返されるというイメージを目指しています。
深いバックパームでは、すべての指がある程度自由に動かせるので、出現させたカードのスピンやロールをさりげなく見せるのも自然なアピールが可能です。ただし、それが、テクニックを見せているように見えてしまえば逆効果となってしまします。
フロントパームのところでも書きましたが、マジシャンの都合ではなく、「そもそもカードをどのように持つのかが自然か?」という視点から考えて、カードは縦に出現させる方法を考えました。今ではよく似た見せ方も見かけますが、30年前は非常にユニークであったと思います。
バックパームからのプロダクションと同様に間の取り方や捨て方も大事です。出現したカードロールやスピンを、間を取る時に自然に見えるように入れるようにしています。
繰り返しになりますが、カードのプロダクションの基本はパームが見えない事ですが、不思議に見せるためのポイントは自然な脱力感と思います。また、例えパームが見えなくても、強張った手から出現するカードは不思議ではありません。例えば、バックパームは手を空に見せる形としては最高のパームですが、だからといって“バックパームの手をアピールする”ような見せ方は、結果として“技術をアピールする”見せ方となって不思議さは減少するというのが持論です。
パームを感じさせないためには、手の適度な脱力感だけでなく腕全体や体の動きも自然さが大事です。手が脱力できているかどうかは、パームしている手首が柔らかいかどうかで簡単に判断できます。これは他のスライハンドにも共通する簡単なチェック方法ですのでお試し下さい。
次回は、インターロック・プロダクション(木の葉カード)を解説したいと思います。