2018年8月7日、アメリカで“THE ART OF MAGIC”という5種類のマジックの切手が発行されました。図案は「花が一瞬で鳩に変わる(変化・移動)、シルクハットからウサギが出てくる(出現)、マジシャンが水晶玉をのぞき込んでいる(予言)、女性が空中に浮かび、その周りを大きな輪で通す(浮揚)、そして鳥かごの中の小鳥が消えてしまう(消滅)で、マジックの5つの基本現象を表しています。発行はUnited States Postal Service(アメリカ郵政公社-以下USPS)です。
5種横連刷のマジック切手
現在のマジック界で最高のスーパースターである米人マジシャン-デビッド・カッパーフィールドが、ラスベガスで公演したマジックショー”MAGIC LIVE ”の初日に合わせて発売されました。その1週間後には、ニューヨーク史学協会主催の”Summer of Magic”で、USPSがSAM(アメリカ奇術家協会)と共同で、新切手の発表とマジックの実演を行っています。
切手は台紙からはがすだけで貼れるセルフのり切手で、単独の切手以外に、5種20枚を並べた大きなシートも発行されました。
大きな20枚シート
さらに、「シルクハットからウサギの出現」の切手を3枚並べた特殊な小型シートも発売されています。この3枚の切手は、切手を持って右、左によじって横回転させると、ウサギがシルクハットから現れたり、中に入ったり、3つの場面に変化する特殊印刷(レンティキュラー印刷)になっています。まさに、「マジック!!」というわけです。この小型シートには後日談があって、セルフのり切手の目打(ギザギザ)に当たる型抜きが全く入らず、いわば“無目打”になったエラー切手が発見されたのです。
特殊な小型シート
ところでこの切手をよく見ると”FOREVER・USA”と小さく書かれています。 国名のUSAは入っていますが、額面が書かれていないのです。実は”FOREVER“とは、将来、郵便料金(現在は封書55セント)が値上げされても、55セントで買ったこの切手が、追加料金を支払うことなくそのまま使えるということです(このような切手を”FOREVER STAMP”と言います)。 アメリカでFOREVER STAMPは2007年から発行され(当時の封書料金は41セント)、2011年には新しく発行されるほぼ全ての切手がFOREVER STAMPになりました。アメリカ郵政公社が郵便業務の赤字を防ぐために、たびたび郵便料金を値上げしたのです。これに対応して41セント(2007年)で買った切手が12年間に7回値上げされ、2019年には55セントになったのですから、FOREVER STAMPを投資対象にする人たちもいるようです(外国宛ての郵便にも不足料金分の切手を貼れば使えます)。
「マジックの切手」は、海外では100種類以上が発行されていますが、日本では残念ながら2012年11月20日に発行されたディズニーキャラクターの中に、ミッキーマウスがマジシャンに扮して、シルクハットから3つのハートや音楽を出現させる80円のセルフのり切手が1種発行されているだけです。
ミッキーマウスのマジシャン