カンボジアの寺院(3)
準備
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いま、どのような状況にあるかを示すために、写真は、背後の裏板を外して写してあります。したがって、これはマジシャン側から見た写真です。まず、2連のコンパートメントは、マジシャンから見て右側にスライドさせておきます。次に、「王様の幽霊」のひとつを、黒い板の上に置いて、その上にチェッカーのフェイクの筒を被せ、さらに、その上に、バラバラな2枚のチェッカーを載せます。このセットを、コンパートメントの一番右端の部屋に入れます(写真24)。
<写真24>
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扉は3つとも閉め、パゴダや、もうひとつの「王様の幽霊」そして、重ねた本物の9枚のチェッカーは、キャビネットのそばに置いておきます。
やり方(物語は省きます)
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まず、中央の扉を完全に開けて、中が空であることを示します。黒い板に、9枚のチェッカーを重ね、それを、中央の部屋に入れて扉を閉めます(写真25)。
<写真25>
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扉を閉めながら、ひそかにレバーを動かして、2連のコンパートメントをマジシャンから見て左側に動かします。この結果、重ねた本物のチェッカーとフェイクのチェッカーとが入れ替わります(写真26)。
<写真26>
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ここで、左右の扉の前方の扉だけを開けて、あたかも両方とも空であることを示します。左側に移動したチェッカーは観客からは見えません。
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次に、中央の扉を2層とも開けて、中のチェッカー(フェイク)を、その下の黒い板とともに、取り出し、代わりに、「王様の幽霊」を入れて、扉を閉じます。左右の扉も閉じます。
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パゴダを取り上げて、いま取り出したチェッカー(フェイク)に被せます。
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すべての扉の前方だけを開けて、3つの部屋がすべて空であることを示します。中央の扉も前方だけを開けて、中に置いた「王様の幽霊」が消えていることを見せます。そして、再びすべての扉を閉じます。
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このとき、レバーをスライドさせて、2連のコンパートメントを右側にスライドさせます。結果として、本物のチェッカーは、中央の部屋に来ます(写真27)。
<写真27>
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パゴダを掴んで、親指で中のフェイク・チェッカーの筒を押さえながら上げます。すると、パゴダの下から「王様の幽霊」が出て来ます。
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パゴダを脇に置いて、中央の扉を2層とも開けます。中に重なったチェッカーが見えます。これを下に敷いてある黒い板とともに取り出して、何気なくチェッカーがすべてバラバラであることを示します。この、「何気なく」というのは、置きながら、テーブル上に投げ出す感じです。
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中央の扉を閉じながら、レバーをスライドさせて、2連のコンパートメントを左側にスライドさせて、「王様の幽霊」を中央に持って来ます。
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キャビネットの裏側の板を外します。板を外しながら、中央の部屋にある「王様の幽霊」を指先で掴んで、マジック・テーブルのセルバンテに落とします。あるいは、テーブルの手前に袋を付けておいて、そこに落として処理します。裏側の板は大きいので、この陰で行なえば、この「処理」は容易です。外した裏側の板は両面を見せて脇へ置きます。今度は、前側の扉もすべて開けて、キャビネットの前後を通して見せて終わりです。
コメント
手品マニアの方の中には、「なんだこんな手品、興味がないよ」と思われた方がいらっしゃるかもしれません。しかしながら、「チェッカー・キャビネット」をこれほど詳しく写真や図も含めて丁寧に解説してあるのは、世界中で、なんと、ここだけなのです。オキトのオリジナルの解説書もOwenやイルージョン・アート・マジックの解説書もこれほど丁寧ではありません。つまり、その観点だけからすれば、この解説は、歴史的にも貴重だと言うことです。
ちょっと細かい話をつけ加えておきますと、オキトのオリジナルの扉は、手前側に倒れる形式のもので、ノーム・ニールセンの製品や、イルージョン・アート・マジックの製品も、その形式を踏襲しています。一方、ThayerやOwenの扉は、いずれも上に引き上げる形式のもので、さらに、この二つのメーカーのものは、上に解説したように、後ろの板が外れて、最後には、前後が見通せるようになっています。また、オキトの製品ももちろん、いずれのメーカーの製品であっても、時代によって、デザインや色の配合、あるいはサイズなどが異なりますので、オークションなどで購入される場合は要注意です。
例として、イルージョン・アート・マジックの製品を掲げます。まず、この奇術用具店のものは、別売にはなっていますが、専用のテーブルまで付いています(写真28)。 (了)
<写真28>
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Photo: study by CodyR