麦谷眞里

カンボジアの寺院(1)

まえがき

 これが手品の題名か?と思われた方もいらっしゃると思いますが、Owenのカタログに載っているタイトルは、まさに”TEMPLE OF CAMBODIA”なのです。 ただし、今回、解説に使うのは、現在販売されているものではなくて、1960年代に販売されていたものです<写真1>

<写真1>

 OwenのカタログNo.12(2006年。これが最新です)を見ますと、デザインは異なりますが、基本的な構成は同じです。 なお、このカタログに収載されているほとんどの商品には別冊の価格表に価格が書いてあるのですが、これには価格は書いてありません。 したがって、購入したい人はOwenに問い合わせなければなりませんし、そもそも注文できるかどうかもわかりません。
 それはともかく、この旧版の”The Temple of Cambodia”は、Les Smithという人が手描きでペイントしていることでも有名で、いろんなバージョンが出回っていて、マジック・オークションでは、なかなかの人気アイテムなのです。
ちなみに標準的な落札価格は、2500ドル~3000ドル(25万円~30万円)です。

この手品の現象

 たぶん、かなりの手品マニアの方でも、実際の現象をご覧になった方はおられないでしょう。実は、見せ方にも何通りかあって、私の手元にも少なくとも3通りの解説がありますが、ここでは、もともとのOwenの用具に添付されていた解説の通りの現象を紹介します。
これには、「カンボジアのジャングルの奥深く・・・」などと始まる物語があるのですが、冗長になるので、いくつかの要点だけ平行して解説します。
マジシャンは、写真1のようにテーブル上にセットされた各用具を説明します。中央の青い3つの扉のある赤い建物は、秘密の金庫です。白い人形はカンボジアの王様の幽霊です。赤と黄色の9枚のチェッカーは、黄金でできた宝物です。赤い屋根の青の円柱はパゴダ(仏塔)です。
「カンボジアの王様は、自分の死を予感したとき、財宝(黄金)を秘密の金庫に隠して、死後、自分が幽霊となって、その財宝を守ることにしました。」と言いながら、まず、秘密の金庫の中央の扉を上方に開けて、中が空であることを見せます<写真2>

<写真2>

 「秘密の金庫には、隠す場所が3部屋ありますが、王様は、そのうち、中央の部屋に、その財宝を隠したのです。」と言いながら、赤と黄色のチェッカーを中央の部屋に重ねて入れます<写真3>。このとき、チェッカーがすべてバラバラであることがわかります。また、チェッカーを重ねて入れやすいように、まず、下に、左側の白い人形(王様の幽霊)の下に敷いてある黒い板を置いて、その上にチェッカーを重ねて金庫の中央の部屋の中に入れます。
「それでも王様は、自分の死後、この財宝が誰かに盗られるのではないかと、とても不安だったのです。そこで、自分が幽霊になって、死後も自分の財宝を守ることにしたのです。」と説明しながら、<写真2>の左側に置いてある白い人形を示します。

<写真3>

 チェッカーを中央の金庫に入れたら、扉を元通りに閉めます。閉めたら、今度は、左右のサイドの部屋の扉を上方に開けます。左右とも空です<写真4>

<写真4>

 「王様の黄金は、金庫の中央の部屋にあるのです。」と言って、中央の扉を上方に開けます。赤と黄色のチェッカーは、ちゃんと中央の部屋にあります<写真5>

<写真5>

  「王様が死んでしまったある日の夜、王様の信頼していた側近の一人が、なんと、王様の秘密の金庫の部屋から、大切な黄金を盗み出してしまいました。しかし、その側近は、黄金を盗み出すときに、その金庫の中央の部屋に、王様の幽霊が入ったことは気づきませんでした。」と言いながら、マジシャンは、まず、金庫の中央の部屋から、下に敷いてある黒い板とともに、9枚の赤と黄色のチェッカーを取り出して、金庫の左側へ置きます。さらに、左側に置いてあった王様の幽霊を金庫の中央の部屋に入れます<写真6>。  「黄金を盗み出した側近は、盗んだ黄金が見つからないように、パゴダ(仏塔)の中に入れて隠してしまいました。」と言って、まず、金庫の3枚の扉をすべて元通りに閉めます<写真7>

<写真6>

<写真7>

 次に、右側に置いておいた赤い屋根の青のパゴダ(仏塔)を、いま取り出した左側の黄金の赤と黄色の9枚のチェッカーの上に被せます<写真8>。「王様の側近は、これで、秘密の金庫の部屋から盗み出した黄金は、パゴダの中に隠したので、もう自分のものだと思いました。」

<写真8>

 「黄金はすでにパゴダの中に隠したので、王様の側近は、もう金庫の部屋はすべて空であることを確認しました。」マジシャンは、ここで、もう一度、各扉を上方に開けて、すべての部屋が空であることを見せます<写真9>。3つの扉は再び元に戻します。

<写真9>

 「それから何十年も経って、王様の側近は、そろそろいいだろうと思って、パゴダに隠してある黄金を取り出しに来ました。ところが、パゴダを開けると、そこには、黄金の財宝はなくて、王様の白い幽霊だけが立っていたのです。」マジシャンは、左側のパゴダを持ち上げて、中に王様の白い幽霊だけがあることを見せます<写真10>

<写真10>

 「王様の幽霊が出たことに、側近はあわてて、秘密の金庫に駆けつけ、黄金があったはずの、中央の扉を開けました。すると、そこには、ちゃんと、かつて盗んだはずの黄金があったのです。」と言いながら、中央の扉を開け、中に赤と黄色のチェッカーがあることを見せます<写真11>。  さらに、チェッカーが本物であることを見せるために、中央の部屋から出して、バラバラにして見せます<写真12>。  赤と黄色の9枚のチェッカーがバラバラの本物であることを示したら、再び、交互に重ねて、金庫の右側に置きます。

<写真11>

<写真12>

 9枚のチェッカーを重ねたら、中央の扉を閉めます。これで、金庫のすべての扉は閉じられたことになります<写真13>

<写真13>

 「王様の側近が驚いていると、突然地震が起こり、金庫は完全に壊れてしまいました。これこそ王様の幽霊の仕業だったのです。」と言いながら、マジシャンは、まず金庫の後ろ側の板を外し、次に前の扉も開け、中が完全に空であることを示して終わります<写真14>

<写真14>

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