<解説>
この図形消滅パズルの作りは面積増減パズルにあるよく知られたパタンの基本的なデザインであり、筆者のオリジナル作品と言えるものではない。
このパタンを利用した作品としてすでに「ダイヤの盗み取り」「不思議なトランプの写真」をご紹介済みである。
筆者はその基本パタンの中央にサイコロを置いてみて、その周囲の切片4個を全くケレン味のない動作で取り除き、
同じような自然な動作でそれを元に戻すと知らず知らずの間に必要な並べ替えが完了し、図形に穴があいたりふさがったりするという手法を構成した。
この動作が上手くいくと全体が不思議な奇術になるということである。
<演出>
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演者はまず「A Golden Die」と書かれた箱を取り出す。<写真1>そして次のように語り始める。「この箱にはとても高価で時価85万円もする品が入っています。ここにその標題が書いてあります。これを見て「金の死亡!」と訳す人がいますが、それは誤訳であり、正しくは「黄金のサイコロ」です。サイコロの英語は『ダイス』だと思って方も多いのですが、実はダイスは複数形であり、単数は『ダイ』なのでした。」
ここで蓋をあけると中央に金のサイコロが見える。そして、周りにそれを囲むピースが4個見える。<写真2>「このように黄金のサイコロは貴重品なので、傷がつかないように周りにサイコロを保護する緩衝材が入っています。」と説明する。
<写真1>
<写真2>
<注>
サイコロの価値は次の計算による。大きさは一辺が2cmの立方体であるから体積は8cm³である。金の比重は19.3であるから、その重量は154.4グラムと計算される。そして金価格は2019.9.30現在1ℊあたり約5500円あるから、この黄金のサイコロの原価は約85万円という計算になる。
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そして、金のサイコロを取り出して、箱の脇にそっと置く。そうしたら、周りのピースを順に取り出して箱を一旦空にする。
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「では、周りの緩衝材を元に戻しましょう。」と言い、4個のピースを箱に戻す。するとピースが箱を埋めつくしてしまい、穴が無い状態になる。<写真3>
<写真3>
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「このように黄金のサイコロを取り出すと、入れ物に隙間ができないように周りがこのように変化してしまいます。
でも、そうなると今度は黄金のサイコロが入る隙間がありません。
それでは、黄金のサイコロを元に戻したいときには、どうすればいいのでしょうか。」
そう言って4個のピースを再び箱の外に出す。
そして黄金のサイコロを観客の手に持たせておいて、再び4個のピースを箱に入れるとなぜかまた中央に穴が出来る。<写真4>
<写真4>
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「そのサイコロをここに入れてみてください。」と穴を指さす。観客がサイコロを穴に入れるとピタリと納まる。<写真2>
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最後にケースの蓋をしめて終わりである。
<用具の作り方>
- ボール紙で一辺が1.8㎝の立方体を工作し、その6面に金色の紙を丁寧に貼りつけるのがいいであろう。
そして各面に黒の油性ペンでサイコロの目を画いて完成する。
金色の紙は折り紙セットを買い求めるとその中に含まれている。
- 周りの4個のピ―スの設計図を第4図に示す。筆者はすべてをボール紙細工で試作してみたが、4個のピースは発泡スチロールの板をカッターで切って作るのもいい案である。なお、将来これを商品化する場合には、黄金のサイコロは金属で作り、4個のピ―スは、プラスチックで作るのが適当であろう。
それに緑や青のフェルトを張るといかにも宝石入れらしくなる。
黄金のサイコロのケース設計図
- ケースも大切であり、高さ2.0cm、縦横10.5㎝の正方形が標準である。蓋はそれより一回り大きく作る必要がある。これもボール紙で作ることできるが、商品化のときは木やプラチックのケースの方がスマートであろう。
<4個のピースのハンドリング>
このパズルの場合、各ピースの位置を変えないでも、
各々のピースを180度回転させて元の位置に戻すと、
穴のない正方形(一辺が10cm)と穴のある正方形(一辺が10.2㎝(正確には2√26cm)とが入れ替わる。
しかし、ピースを180度回転させる動作はたいへん目につく動作になる。そこで、筆者が工夫したのは各ピースの向きの変更を必要としない次の手順である。これを覚えるには次の手続きを「Z―Z」と覚えておくのが便利である。
(1)ケースにある四個のピースを「Z」の字の順に取りあげて、そのままケースの脇に一文字状に左から右に並べていく。
(2)そうしたら、ピースを戻すときは一文字の逆の順にピースを右から順に取り上げて再びZの字の順でピースをケースに収めていくのである。
この手順をとまどいなくスムーズに実行できれば、この演出は完璧となる。
A B D C
C D → A B C D → B A
(1) (2)
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Photo: study by CodyR