<解説>
エルムズリカウントはたいへんユニークなカード奇術技法です。
その技法はイギリスの奇術研究家Alex Elmsleyによって20世紀に開発されて、
以来世界中のカード奇術家が愛用する技法となりました。
それはFalse Countの一種なのですが、枚数を偽って数えるものではありません。
原案のとおり実行するならば、実際に4枚のカードをやはり4枚に数えるのです。
そこでこの技法は別名“Count Four as Four”とも呼ばれます。
それでは、そのどこがFalse Countなのか?ですが、この技法を用いると4枚のうち3枚目が全く観客の目に触れないことになるのです。
それでどうして4枚を見せられるのか?というと、
「実は、1枚目のカードが二回数えられることになる」というのがその答えです。
エルムズリカウントはたいへん便利な技法ですが、残念なことにそれは現在奇術界で乱用されていると筆者は感じております。
この優れた技法をパケットトリックなどで安易に使うべきではないと筆者は考えます。
これこそエルムズリのおかげ!という奇術のためにこの技法は大切にすべきです。
次に技法そのものですが、実はおかしなやり方を演じている人がたいへん多いのが現実です。
講座では、筆者がぜひ避けていただいたいと考える欠点のある方法を幾つか例示しました。
それはカードを数える動作として自然ではないからです。
実は、名カード奇術師のDai VernonがTwisting Acesと題する興味深い奇術を発表しているのですが
(More Inner Secrets of Card Magic)そこでエルムズリカウントをうまく活用しました。
そこで、その方法が広く普及することになりました。
これがぜひ避けてほしい方法の一つです。
この方法はTwisting Acesの動作のなかでだけ許される方法になっています。
(Twistの動作に続けて実行すると自然に見える)
Elmsley本人がレクチャービデオの中で、この方法は止めてくれと叫んでいます。
もうひとつ流行しているのですが、ぜひ避けていただきたい方法は、まず左手に4枚を持ち、
それを右手に一枚ずつ数え取っていくと思いきや、突然4枚を右手でつまみ持ち、
左手の拇指でカードを左に一枚ずつ取って数えるというやり方です。
これは易しい方法ですが自然な数え方ではありません。
そこで筆者はこの講座では、「これならお勧め!」という方法をご説明することにいたしました。
その一つはエルムズリが「これが私の方法です」とレクチャービデオで見せている方法であり、
もう一つは筆者が一番自然であると考えるカードを持っている左手でプッシュオフ動作を行う方法です。
読者の方々にはその動作の自然さについて神経を使っていただきたいと考えるものであります。