現象
通常の現象の他に4枚のカードが全てブランクカードに変化して、そのブランクカードが全てスペードのAに変化します。この点で、そこには明らかにダブルチェンジと言う現象が存在します。もちろん、赤バックのスペードのAはブランクカードに変化します。
準備
・赤デック(ケース付き)1組
・赤バックのブランクフェイスカード1枚
・青デック(ケース付き)1組
・青バックのブランクフェイスカード1枚
・青バックのスペードのA(レギュラー)4枚(この内の1枚は青デックからのもの)
赤デックのトップに赤バックのスペードのA(レギュラー)をおき、そのトップに赤バックのブランクカードをセットします。つまり、トップはブランクカードです。そしてこの2枚は、後で持ち上げるために2枚のインナーエンドだけをクリンプしておきます<写真1>。
写真1
青デックのフェイスに3枚の青バックのスペードのA(レギュラー)を置き、そのフェイスに青バックのブランクカードをセットします。つまり、ボトムはブランクカードです。もう1枚のスペードのAはデックのトップにセットします<写真2>。
デック2組をそれぞれのケースに入れてテーブルにおきます。
写真2
手順
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パフォーマーは2組のケースからデックを取り出して(この時デックのフェイスが客に見えないように注意します)、フェイスダウンでテーブルにおき、ケースはテーブル以外の所におきます。
右手は赤デックを左手に取り、そしてクリンプしたインナーエンドを右側に向けてテーブルにおきます。するとデックは横置きになり、クリンプコーナーは右側にきます<写真3>。
次に両手はデックのトップ2枚のセットを崩さないでテーブルリフルシャフルを1、2回行い、右手で元の場所に縦向きに戻します。クリンプはパフォーマー側にきます。
写真3
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次に青デックを取り、トップとボトムのセットを崩さないテーブルリフルシャフルを行い、右手で左手にフェイスダウンでおきます。そして右手はトップ4枚のカードを取り、それをテーブルにフェイスアップにしておきます
<写真4>。
写真4
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続けて右手は左手に持っているデックのフェイスを自分の方に向けて左手に持ちます。そして左手の親指でフェイスカードを右手に広げていき、エースとブランクフェイス以外のカード1枚を選び、右手でそのカードをフェイスアップでテーブルにトスします<写真5、6>。この時も左手に持っているデックのフェイスが客に見えないように注意します。
写真5
写真6
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そして右手は先にテーブルに出した4枚のうち、スペードのA以外の1枚を取り上げて、そのカードを青デックの中央に戻します<写真7>。
そしてデックを左手に揃えながら4枚のフェイスカード、即ち、ブランクカードと3枚のスペードのAの下に左手小指のブレイクを作ります(デックのフェイスが客に見えないように注意します)。
以上の動作は4枚のカードの種類の違いを印象づけるばかりでなく、4枚のフェイスカードの下にブレイクを作るためにも行ったのです。
写真7
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右手は4枚のテーブルカードを取り上げて、それを右手だけでフェイスアップのファンにして客に示します<写真8>。
この時も左手に持っているデックのフェイスが客に見えないように注意します。
写真8
右手はファンのトップカードのバックを左手に持っているデックのフェイスに付けて、
そのファンをフェイスアップのままデックに閉じると同時にデックを水平にして、
ブレイク以上の4枚のカードを右手のカードのトップに付け加えます。
そして直ぐに右手は8枚のカードの両エンドを上からエンドグリップで掴み、デックから取り上げます<写真9>。
写真9
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デックをフェイスアップで握っている左手は、親指をデックの左サイドから下に回してデックのバックに付けてその親指を上に伸ばしてデックを右回転させます。
次に左手の中指、薬指、小指を伸ばしてデックをフェイスダウンに掴みます<写真10>。
右手は持っているフェイスアップのパケット(8枚)をデックのトップに持ってゆき、右手の親指はデックのトップカードをこっそりとパケットの下に取り上げますが、そのカードと8枚のフェイスアップのパケットとの間にブレイクを作り、そのままデックの右横へ動かします<写真11>。
写真10
写真11
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ここでアタフスムーブ(Any Time Face Up Switch)を行います。要するに、左手の親指は右手のパケットのフェイスカード1枚をデックのトップに剥ぎ取ります<写真12>。
続けて2枚目のフェイスカードを先に剥ぎ取ったカードの上に少しファンの形に剥ぎ取り、
更に続けて、左手の親指は右手から3枚目のフェイスカードを先の2枚の上にファンの形に剥ぎ取ります<写真13>。
写真12
写真13
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右手は持っているスペードのA(実際はボトムのフェイスダウンカードの上にブレイクを保持しているパケット)をそのまま左手のフェイスアップファンのフェイスに付けて、デックの上で4枚のフェイスアップファンを示します。
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右手はファンをデックのトップに閉じると同時にブレイク以下のフェイスダウンカードを放して、デックのトップにファンになっていた3枚のフェイスアップカードをカバーします。
右手は直ぐにパケット(5枚)を左手の指先に持ち上げて、両手でサイドとエンドを揃えます<写真14>。
右手はパケットをエンドグリップで持ち、左手はデックをフェイスアップでテーブルの横において右手のエースを注目させます<写真15>。
これはどう見ても、パフォーマーが4枚のカードを見せて、それを揃えて右手だけで持ち、左手はデックをフェイスアップで横においただけに見えます。
写真14
写真15
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右手はパケットをフェイスダウンにして左手におき、その左手を客の方へ伸ばして、
「パケットをフッと吹いてください」と言います<写真16>。
写真16
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次に、第13回、マーローのワイルドカード(1)で解説した、方法4から方法6までを行い、全てのカードをブランクカードに見せます。
今ブランクカードはトップから2枚目にきています。
右手は左手のパケットを取り、フェイスダウンでテーブルに約3、4cm上から軽くポンと落とします。
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次にパフォーマーは右手をテーブルに置いてある赤デックに近づけて、トップの2枚をエンドグリップで1枚のように取り上げます。これは、トップ2枚のインナーエンドを予めクリンプしておいたので簡単にできます。そして「これが何のカードか見てみましょう」と言って右手の平を上に向け、カードをフェイスアップにしてスペードのAを示し、「スペードのエースです。」と言います<写真17>。そして右手はそのカードをフェイスダウンにして赤デックのトップに戻します。
写真17
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右手はテーブルから青バックのパケットを取り上げて左手におきます。そして右手は赤デックからトップカードだけを取り上げて、「このスペードのエースでブランクカードにタッチします。」と言って、右手はその赤バックカードのフェイスを見せないで、左手に持っている青バックカードのバックにタッチします<写真18>。そしてその赤バックカードをフェイスダウンでテーブルにおきます<写真19>。
写真18
写真19
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次は左手のパケットを全てスペードのAに見せるのですが、先ず、左手に持っている青バックのパケットを右手でフェイスアップにします。そして左手の親指でフェイスカード1枚を右手に押し出し、
2枚目も同じように右手のカードの下へ押し出します<写真20>。
次の3枚目の時にシングルバックル又は2カードプッシュオフで2枚を1枚のように右手のカードの下へ押し出します。
左手は最後のAを右手のカードの上(フェイス)において4枚のスペードのAを示し<写真21>、
フェイスアップのまま左手に揃えます。
写真20
写真21
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次にパフォーマーは右手を客の方に向けて、テーブルの赤バックカードを表向きにターンするように言います<写真22>。
それはブランクになっています。
この時に生じるミスディレクションの時間を利用して、左手のパケットのトップにある青バックのブランクカードを左手にギャンブラーズパームします。
右手はスペードのAのパケットをフェイスアップでテーブルにトスして客にチェックしてもらいます<写真23>。
そして左手は何気なくパームしたカードをポケットに入れてしまいます。
写真22
写真23
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客がチェックしている間に青デックを取り上げて左手にフェイスダウンに持ちます。
客に分からないようにトップ数枚をほんの少しだけ広げて、3枚のフェイスアップカードを見つけて閉じる時に4枚のカードの下に左手小指のブレイクを作ります<写真24、25>。
今、デックはトップの1枚のフェイスダウンカードが3枚のフェイスアップカードをカバーしています。
写真24
写真25
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客に4枚のスペードのAの内、3枚だけを返すように言って、その3枚を右手に受け取ります<写真26>。
1枚はフェイスアップでテーブルに残っています。そしてパフォーマーは3枚のスペードのAをフェイスアップでデックのトップにおきますが、その時、右手の4本指でスペードのAのトップカードを少しインジョグしてトップにおきます<写真27>。
右手はデックを揃える動作でブレイク以上のカードも一緒に取ってデックのトップにフェイスダウンにします。
写真26
写真27
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その結果、デックのトップは3枚のフェイスダウンカード、その下に1枚のフェイスアップカード、そしてその下に少しインジョグしたカード(スペードのA)になっています<写真28>。
右手はデックを上から両エンドを握りますが、右手の親指をインジョグカードに当ててそのインナーエンドを下へさげながらデックの中へ押し込むと、その上の4枚(3枚のフェイスダウンカードと1枚のフェイスアップカード)が右手に取れます<写真29>。左手は青デックをコートの左ポケットに入れてしまいます。
写真28
写真29
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右手は持っているパケットを、テーブルに残っているフェイスアップのスペードのAにフェイスダウンで少し右寄りに、つまり、スペードのAの左インデックスが見えるようにサイドジョグして重ねます<写真30>。
そして直ぐに右手はそのパケットをエンドグリップで取り上げて、サイドジョグのまま左手におきます。右手はパケットを握ったままです。左手小指の指先は右手で持っているパケットのリバース(表向き)カードの右下コーナーをプルダウンして、その上にブレイクを作り、それを右手の親指に移します。つまり右手の親指でブレイクを保持します。
写真30
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このプルダウンはカードの枚数が少ないので上手くブレイクが作れないかもしれません。その場合は、左手の親指でパケットを少し強く抑え、右手の親指はサイドジョグした4枚のカードのインナーエンドを上に持ち上げます。そしてボトムのリバース(フェイスアップ)カードを親指から放して右手の親指にブレイクを作ります<写真31>。
写真31
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右手はフェイスダウンのカード(トップの3枚とその下のリバースした1枚)を親指でブレイクを保持したまま左手のフェイスアップのスペードのAの上(左横)へ動かしてスペードのAをカバーしたら、右手は直ぐに親指のブレイクを放し、リバースカードをスペードのAの上に残して右方向へ戻してスペードのAが他のカードに変化したのを示します<写真32、33>。
このカラーチェンジは瞬間的で驚きます。
写真32
写真33
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右方向へ戻した右手は直ぐに、右手の人さし指を右手で持っているフェイスダウンカードの左サイドに付け、右手の薬指と小指をカードのバックに付けてその薬指を伸ばします。するとカードは右手の中指、親指、人さし指を軸にフェイスアップに回転します。
フェイスアップになったカードの左サイドを、フェイスカードを押さえている左手の親指の下に挟みます<写真34>。
右手は持ち方を変えて、フェイスアップになった3枚のカードを広げて4枚の普通のカードを示して「ワイルドだろう?」と言います<写真35>。
写真34
写真35
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カードを左手にフェイスダウンに閉じて、左手はパケットを左ポケットに先に入れたデックのフェイスにおきます。後でデックをポケットから取り出す前に、左手親指でトップの3枚のスペードのAを数えて、その3枚をポケットの中に残します。
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次に右手はテーブルの赤デックを取り上げて、それを左手の指先にフェイスアップでおきます。更に右手はテーブルの赤バックのブランクカードを取り上げてそれを赤デックのフェイスにおきます<写真36>。この赤デックのトップはスペードのAです。
写真36
ここで好きなカラーチェンジを行い、ブランクカードをスペードのAに変えて<写真37、38>。「これで普通に戻りました。」と言って、デックを揃えて右手に持ち、左手は赤ケースを取り上げて右手はデックをケースに入れます。
写真37
写真38
"Expert Card Conjuring" by Alton Sharpe,P.121~123,
第13回、マーローのワイルドカード(1)は素人向けで、ここに紹介した(2)の方はカーディシャン向けです。特に(2)の方は、パフォーマーはこのトリックで使用するパケット(追加分のスペードのA3枚と赤、青のブランクカード2枚)だけを用意しておき、それと同じデックを客から借りられたら、それこそラッキーで客が驚嘆する超ワイルドのトリックを見せられます。
(2)の方で、最初に赤バックをシャフルする時に何故テーブルリフルシャフルなのか、何故クリンプを右向きでシャフルするのかは、もしオーバーハンドシャフルをするとクリンプが元に戻る恐れがあり、クリンプを右側に向けてテーブルリフルシャフルをすればクリンプには影響がありません。赤デックでテーブルリフルシャフルを行ったので青デックのときも同じシャフルを行います。