マニピュレーション用のカードでは、均一なファンを容易にするためにワックスかパウダーでの表面加工が必要です。
使用するのは市販のロウソクで十分で、ロウをカードの表裏の全面に漏れなく塗ります。ロウを使うメリットは、十分な粘着感があって、均等なファンが容易にできる事です。従って、特にファンカードの場合にはロウがお勧めです。
ロウの欠点は、後述のファンニングパウダーよりもカード同士の摩擦抵抗が大きい事で、そのためファンプロダクションには適しても、一枚出しには適さないところです。また、特に冬場はロウが硬くなり、使用前に体温などで温める必要があります。また、カードが汚れやすいのが難点です。カードが汚れた場合には、ロウを剥ぎ取ってから再度塗りなおします。ロウを剥ぎ取る方法は、フラットな板などでこすればよく、私はプラスティックの定規など若干弾力性がある板を使います。
ファンニングパウダーは、ステアリン酸亜鉛というベビーパウダー(シッカロール)などにも使われている粉末で、マジックショップなどで購入できます。ファンニングパウダーの紙の袋は見栄えが良くないのでカット頂ければと思います。布の袋の場合には以下のようになります。粉の入った袋でカードの両面を1枚ずつ軽く叩いて粉を付けます。粉だけを購入した場合には、粉を布やティッシュペーパーなどに包んでカードの表裏をこすります。ジェフ・マクブライドは、ビニール袋にパウダーとカードをデックごと入れて、袋全体をシェイクするという大胆かつ横着な(笑)方法です。
ファンニングパウダーの場合には、カードにパウダーをまぶしただけでは不十分で、パウダーをなじませる必要があります。そのために、両手でカードを挟んで押しつけながら回転させてこすり合わせます。適宜ファローシャッフルながら、繰り返してこすりあわせるとより均一になって良いでしょう。
ファンニングパウダーの特徴は、ロウと比べてカードが汚れにくい事と、粘着感が少なく一枚だしなどもスピーディに行える事です。逆に欠点は、粘着感が少ないためにファンでのカードの間隔のばらつきができやすい事です。カードの状態が悪くなった場合には、ティッシュペーパーなどでカードを1枚ずつ拭いて汚れを落としてから、パウダーを塗りなおします。
私自身は、ロウでの加工はメンテナンスが面倒である事と、万が一観客にカードを見られた(触られた)場合にカードに加工をしている事が判ってしまう(誰でもファンができる仕掛けのあるカードと思われる)事が嫌で、レギュラーカードにはファンニングパウダーを使っています。ただ、粘着性が欲しいファンカード、ジャンボカードにはロウを使っています。
ミリオンカードが上手かどうかは、演技を見なくても使っているカードを触ればすぐに判ります。上手な人のカードは間違いなく扱いやすいです。下手な人のカードは、変な癖があったり、湿っぽくて重たかったりして、カードが均一にファンにならないというような特徴があります。
ミリオンカードに慣れない間は手の汗でカードが湿気るのが原因なのかも知れませんが、癖のあるカードは上達の妨げになるので、惜しまずに早めに交換する方が良いでしょう。また、機会があれば、上手な方のカードを触らせてもらう事をお薦めします。使いにくいカードでの練習は時間の無駄で、カードのコンディションには常に最大の注意が必要です。